第2話 月は叢雲花に風
今日は中秋の名月だ。別名十五夜、旧暦の8月15日のことだ。
旧暦において、1.2.3月が春、4.5.6月が夏、7.8.9月が秋、10.11.12月が冬。秋の中の月なので中秋である。と豆知識は置いといて、テレビでもインターネットでも、中秋の名月だと何度も目に入る。ここまでアピールされると、人の性として夜空を見上げるのは自然なことであろう。
しかし、わたしが見た月は、雲がかかり、ぼやーと雲がかかり、月の光だけが雲越しに見えていた。
かの朧月もかくやと言いたいところだが、朧月の季語は春である。今が春なら題名は「朧月夜に似るものぞなき」にしたが、残念。今は秋である。
さて、そんなことはどうでもいい。わたしは月を見つめるのはあまり好きではない。いや好きではないというと語弊がある。月は綺麗だし、月見も趣があっていいと思う。しかし、月を見つめるとなんともそわそわした気持ちにならないだろうか。月を見つめ、夜道を歩くといつもとは別世界にいるような気がする。
だからわたしは月を楽しむ時は月明かりを楽しむことにしている。人生において、心の揺らぎは少ない方がいいのだ。それでもどこか変な気持ちになるにはなるが。
これは少し季節が早いが、李白の『静夜思』にはこうある。
牀前看月光
疑是地上霜
挙頭望山月
低頭思故郷
と。
山の上にある月を見る時は故郷を思う時だ。故郷を遠く離れていないわたしには月を見ることの本質はまだわからない感覚なのかもしれない。
「人生は何事をも為なさぬには余りに長いが、何事かを為すには余りに短い(中島敦『山月記』)」とまでは考えていないけれども みお @m103o
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