第4話 書き込み3
その7
「私立中学から、付属の高校に進学しました。それから勉強がもっと大変になりました。自分は心理学を勉強したいと思うようになりました。自分が見ているものが幻覚なのか、本物の霊なのか知りたくなったからです。
霊が毎日近くに来て、話しかけて来るようになりました。学校の授業中も、体に触って来るので、よけるのが大変でした。そのうち、一人で喋っているとか、挙動不審と気味悪がられるようになりました。
触って来るのは知らない男子で、気持ち悪かったです」
その8
「大学は無事に志望校に入れました。行きたかった大学がそれほど難しいところではなかったので、現役で合格しました。大学は実家からは通えない距離だったので、一人暮らしをするようになりました。それからは、授業の時以外は家に引き籠っていました。常に幽霊が見えるので、精神科に通い始めました。例えば、家で血を流した人が見えるから不動産屋に聞いたけど、そこはずっと自分と同じ大学の学生が住んでいて、自殺した人なんかいませんでした。
それに、病院に行くと、精神科の先生の横におばあさんが見えました。それで、こんな感じのおばあさんが隣にいると、先生に話すと、私の母親はまだ生きていると言われました。自分は宜保愛子さんみたいな霊能力者じゃなくて、ただ単に幻覚を見ているのかなとわかりました」
その9
「大学を卒業しましたが、就職できるような健康状態ではなく、臨床心理士を取るために大学院に行きました。無事に最短で臨床心理士になりましたが、働けるような状態ではなくなっていました。職歴はありません。今は無職で実家にいます。精神科に通院しています」
その10
「こうやって書き込みしている心霊体験は全部幻覚なのかなとも思います。最近は、男がやって来て耳元でつぶやきます。『もういい加減諦めろよ。執着することは、より自分を苦しめることだ』
一人でいるのが怖くてたまらないので、日中は公園のベンチとかに座っています。すると、知らない人が話しかけて来ました。
もう、現実なのか幻覚なのかわかりませんでした。知らないお爺さんでした。85歳くらいの人で、短髪の白髪で、若い頃は肉体労働者をやっていたような感じでした。
ちょっと怖かったです。優しい感じではありませんでした。
『君はもう死んでる。それに気が付いてないんじゃないの?誰も君に話しかけて来ないだろう?それは君が死んでるからだよ』
確かに思い当たることがありました。スーパーに行って、試食販売の人がソーセージを配っていても、滅多にもらったことがありません。携帯には誰からも電話がかかってきません。手紙も来ません。
まじで?もう、死んでたの?
愕然としました。
そんなことに気が付かなかったなんて!
いつ死んだのか。
それがわからない。
その時、はっとしました。死んだらその後、どうやってあの世に行けばいいのかわかりませんでした。気が狂ったようになって、お寺に走って行きました。
公園から一番近い、大きなお寺でした。その場にいた人に「助けてください」と言うと、警察を呼ばれました。
「自分は死人なのに、なぜ逮捕されるのか」と聞くと、警察の人は「逮捕されたんじゃないし、まだ生きている」と言われました。
そして、精神病院に連れていかれました。
自分は生きているのか、死んでいるのかどちらなのかわかりません。
誰かわかる人がいたら教えてください」
(返)「死んだタイミングがわからないってことは、まだ生きてるんじゃないか?」
(返)「パソコンの入力は、とりあえず生きてないと物理的に無理だと思う」
俺も雷魚さんは精神疾患なんだろうと思っていた。
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