黒幕は黒猫Ⅱ

わたしはその事実を知っている。


わたしの描いた絵の妖精に魂が籠ることも、抜け出すことも。

そして、その事で類くんが、わたしに才能があると思い込んでいる事も。


「はぁ」


事実は違うのだ。

この件の黒幕は黒猫だ。


飼い主思いの黒猫が、そう言う風に仕向けているだけだ。


そう、黒猫がわたしの絵に魂を宿している。


わたしは見てしまった。あの黒猫が絵に魂を宿らせる瞬間を!

一瞬だけ眩い光を放ち、わたしの描いた妖精たちが、生き生きと動き始める瞬間を!


何がしたいんだよ!黒猫!


オレンジジュースを飲みほしたわたしは、黒猫を見た。

わたしの視線に気づいた黒猫は、そっぽを向いた。


「ふぅ」


絵の中の妖精に魂が籠ったからと言って、お金になるはずがないのに・・・


そう思うわたしに、黒猫は尻尾を優雅に揺らした。


えっ?!お金になるの?

そんな揺れ方だった。




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美大の女子大生のアトリエがファンタジーなのは秘密です。 五木史人 @ituki-siso

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