第128話 ボッチでお化け屋敷は些細なことらしい。

前回のあらすじっ!

 後ろから「呪ってやるぞぉぉぉ!!!」との迫力ある声が聞こえて、理央がビックリしました。俺は本格的すぎて驚いてます。以上っ!




 俺は理央をなんとか立ち直らせて、お化け屋敷を進む。


 今も理央は俺に抱きついている状態である。


 そこで、俺は気づいてしまう。


(お、おい!今、理央が俺に抱きついてるのはオーラが出てるからじゃないのか!?)


 俺は昨日の夕食時に父さんが、言っていた言葉を思い出す。


(昨日、父さんは「女の子と遊びに行った男はオーラが違うんだ」と言っていた。理央が抱きついている状況はオーラが関係しているのでは!?)


 俺はそう思って今日一日を振り返る。


(そ、そういえば理央との待ち合わせ場所で、理央に絡んできた男を追い払った時、理央からカッコいいって言われたぞ!しかも、今、抱きつかれてる!父さんの言ってたことは本当だったんだ!)


 俺は嬉しさのあまりテンションがあがる。


「ふ、ふふふ」


「ど、どしたの!?いきなり笑いだして!?」


「あ、いや、なんでもない」


(ふぅ、危うく理央から引かれてしまうところだった)


 俺は少しだけテンションを抑える。


 テンションを抑えつつゆっくりと前に進んでいると…


「なんだ?ここは?」


「うーん……病院の病室かな?」


 俺たちは病院のベットが何個か並べられている場所につく。


「通るにはベッドとベッドの間を通らないと先に進めないようだな」


「うっ、そ、そうだね……これ、絶対なにか起こるよ……」


「俺もそう思うが、通るしかないだろ」


「だ、だよね……」


 俺たちは覚悟を決め、ベッドとベッドの間を歩く。


 少し歩くとベッドの下から……


「地獄に連れて行ってやるぞぉぉぉ!!!」


 そう言いながら、一体の人形が俺たちの前に姿を表す。


「キャァァァァァァ!!!!」


 理央が悲鳴を上げながら、俺への抱きつきを強める。


「だ、大丈夫だ!これも人形だから!」


 未だに目をつぶって震えている理央に声をかける。


「ほ、ほんと?」


 理央が涙目になりながら上目遣いで聞いてくる。


「あ、あぁ。だから目を開けて。怖がらなくていいよ」


 俺が声をかけると、理央は人形をだということを確認して、その場に座り込む。


「お、おい!大丈夫か!?」


「う、うん……ちょっと、驚きすぎて腰を抜かしただけだよ」


そう言って立とうとするも、なかなか立ち上がれない。


「ご、ごめん、うまく立ち上がれなくて……」


 理央を見ると未だに震えているのがわかる。


 そんな理央を見て、俺は理央をおんぶできるように座る。


「ど、どうしたの!?凛くん!?」


「い、いや、理央が怯えてなかなか立てそうになかったから、おんぶしようかと思っただけだ。け、決してやましい気持ちがあるわけじゃないからな!?理央が怯えてるのを見てるだけなのが嫌だったし……あ、あと!ここでずっと座ってるわけにもいかないから……」


 俺が理央をおんぶする理由を必死に述べていると…


「ふふっ、えいっ!」


 理央が俺の背中に勢いよく乗る。


「凛くんのおかげで怯えもなくなったよ!ありがとね!凛くん!」


「あ、あぁ。気にするな」


「ふふっ!やっぱり凛くんは優しいね!」


「やめてくれ」


 俺は照れ臭そうにそう答えた。


 すると、後ろから…


「殺す…殺す…殺してやるぞぉぉぉ!!!」


「――ッ!」


 その声を聞いて理央が声にならない声を上げる。


(うぉっ!ビックリした!お化け屋敷で『殺す』ってなかなかストレートに言ってきたな)


 そんなことを思いながら、俺は理央をおんぶして歩き始めた。




 あれから、理央をおんぶしたまま歩き続けるが…


(お、おい!お、おんぶってヤバいぞ!理央の大きなものが背中に当たって、正直お化け屋敷どころじゃない!)


 俺は自分自身と戦っていた。


「ご、ごめんね?やっぱり重いよね?」


 俺の動揺が伝わったのか、理央が不安そうに聞いてくる。


「い、いや!大丈夫だ!むしろ軽いくらいだよ」


「そ、そう?それならよかったけど…」


 そんな会話を理央としていると、日の光が遠くに見えた。


「お!ゴールが見えたぞ」


「うん!凛くんがおんぶしてくれたおかげで最後の方は全然怖くなかったよ!ありがとー!」


「気にするな。それよりも、もう脅かされることはないと思うから、そろそろ降りようか」


 俺はおんぶを解除するため、屈もうとすると…


「お前らぁぁぁぁ!!!!」


「キャァァァァァァ!!!!」


 理央が耳元で叫ぶ。


 俺は完全に油断していたため、かなり驚く。


(寿命が縮まったぞ!?)


 俺たちに向けて叫んできた人を見る。


 そこには、理央のお姉さんがいた。


「えっ!蓮奈さん、一人でお化け屋敷に入ったんですか!?」


「あ?そんなことは些細なことだよ!」


 ボッチでお化け屋敷は些細なことらしい。


(どうやら、俺より一人を満喫してるぞ。俺、一人じゃ絶対にお化け屋敷なんか入れねぇよ)


「お前ら、イチャイチャしやがって!だいたいお化け屋敷でおんぶってなんだよ!羨まし……じゃなくて……」


 と、何やら蓮奈さんがいろいろと言っている途中、理央から…


「ねぇ、凛くん。降ろしてくれるかな?」


「あ、あぁ」


 何かしらの圧を感じて、抵抗することなく理央を降ろす。


「ねぇ、お姉ちゃん」


「お?私の言ってることを理解してくれたか?」


「これ以上、私たちに付き纏うなら、お姉ちゃんが次の彼氏とデートする時、私が後ろから付き纏って邪魔をするよ」


「!?」


 蓮奈さんは驚く。


「いいのかな?次の彼氏との初デートが妹同伴でも」


 理央の言葉に対して…


「ちっ!仕方ない。これ以上はやめとこう」


「その方が賢明だよ」


「いいか?絶対イチャイチャなんかするんじゃないぞ!?」


 そう言って、蓮奈さんは俺たちの下から離れていく。


(なんか、ザコキャラが言う捨て台詞みたいなことを吐いて、走り去っていったぞ……)


「ふぅ、やっといなくなったよ。私たちをストーカーする時間があるなら、合コンでも行けばいいのに」


 激しく同意。


「でも、ようやく2人きりでデートができるね!」


 そう言って理央は俺の手を引いて歩き出した。




 一方、その頃、お化け屋敷では…


「なぁ、あのカップルの後から一人で来た女性、ヤバかったな……」


「あぁ、まさか俺たちが脅かすと『あ、そんなのはいいんで、前のカップル呪ってくれますか?』とか言い出すからな」


「しかも、なぜかお化け役みたいに叫んでたし……」


「………謎だな」


「あぁ、謎だな」


 そんな会話が繰り広げられていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

『ギャグ多め』美少女が転校してきたら、ハーレムになった件。 昼寝部 @hirunebu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ