第7話 新コロ対策本

▼孫子は「兵の形は水に象(かたど)る」と説く。

「水に一定の形がないように、戦い方にも不変の態勢はあり得ない。敵の態勢に応じて自在に変化してこそ、勝利を握ることができる」と、固い〈石頭〉を戒めた。


▼新型コロナウイルス感染症から自分を守るために一番大事なものは?

「まずは情報を集め、知識を身に付け、事実と向き合うことが大切です。それに結論を決めつけない姿勢も大事です」と、岩田健太郎・神戸大学教授は新著『新型コロナウイルスの真実』で述べている。


▼かつて、ニューヨークの炭疽菌テロ、北京のSARS、アフリカのエボラ出血熱を臨床経験した。…という〈感染症のホントの専門家〉である。

 その一方では「空気を読まず、本音トークで迫る」と自称する強いキャラでもあるらしい。


▼本書の第一章と第二章では、〈コロナウイルスの正体〉と感染症対策の考え方を解説。

 第三章では、ダイヤモンドプリンセス号で大勢の感染者を出した理由(ユーチューブで大炎上した深層)も明らかに。

 第四章では、日本政府のコロナ対策や日本社会の向き合い方について論評。

 最後の第五章では、一人一人が新型コロナウイルスをはじめとしたあらゆる感染症と向き合うための心構えを提唱。

 …と、全編が本音で語られており、久しぶりに痛快な読後感を得た。


▼普段はテレビの情報番組など見ないが、(妙なことを言っていないかと)各局の〈新型コロナウイルス感染症〉関連番組をチェック。そもそも、コメンテーターの顔ぶれが妙だ。

 政治評論家や弁護士とか芸能人などなど。…ほぼ同様に(キャスターの意向どおり)いい加減なコメントをしゃべる。

 これに全国の視聴者があおられているかと思えば恐ろしくなる。


▼こんな世相に、岩田教授は「同調圧力が極まると全体主義に行き着きます」と警鐘を鳴らす。

 もっとも恐ろしいのは「調和を乱す人を排除する」という論理が正当化されると、何でもありになってしまう。

 新型コロナウイルス感染症に目を奪われる非常時だからこそ(デマや噂に流されず)自分の頭でよく考え慎重に行動したいものである。

「それにしても、岩手県の感染者ゼロって本当なのだろうか」とつぶやいた途端、そうっと〈新コロ〉は電子顕微鏡の視野から立ち去った。…づぅ話、あったづもな。


   *  *  *

  

▼このまま岩手に新型コロナウィルス感染症の被害がないことを祈りつつ今回で連載をおえる。

『〈新コロ〉と語る』とシリーズ名を物語風にしたが、医学的な情報にフィクションはない。

 本稿を書くにあたり、次の書籍を参考にした。ステイホーム(外出自粛)の折、四冊ともネットですぐ読めるキンドル版である。

『新型コロナウイルスの真実』岩田健太郎(ベスト新書)

『感染症パニックを防げ!』岩田健太郎(光文社新書)

『新型インフルエンザ』山本太郎(岩波新書)

『ウイルスは生きている』中屋敷均(講談社現代新書)

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