第100話 神話に記される者達

 審判の日によって滅びるまで、旧人類は神の地と一部の特殊な場所を除く全ての大地を支配した。


 北サンレーア地方の最北端に存在する【神の地】、アオの大樹海、その最深部に存在し、目を疑うような強大な力を持った魔物たちが蔓延る【深層】、南アドヴバス地方に広がる砂漠のど真ん中に、ポッカリと空いた巨大な穴である【冥界の入り口】。


 これらは旧人類の人間たちから、それぞれ神界へ続く道、虚界へ続く道、冥界へ続く道と考えられており、繁栄を極めた人類は、莫大な資金と人材を投じて調査を行った。


 残された3つの秘境の内、最も重要視されていたのが、神界へ続くとされている神の地だった。

 神の地には未だ解明されていない強力な聖遺物が多く眠り、若返りの秘薬といった人類の利益となる素材が多く眠る。


 何よりも、神の地の最北部に存在する霊峰の頂きには神界へ続く門があるとされており、ゴールが見えない他2つと違い、神の地は最初に解明するべき秘境として調べられていた。





 審判の日、それは神の門に近づき聖域を侵した旧人類を裁くべく、地上に降りた一体の神が行った出来事。


 その見た目は特級に分類され、非常に危険な魔物とされている【白帝狼】と姿は瓜二つだが、その神は銀色の毛を靡かせ輝く黄金の瞳をしていた。


 まず初めに破壊されたのは、神の地に存在する開拓村と前線基地、そこには英雄と呼ばれる特別な力を持った人間たちが多く控える場所であったが、その神は一瞥することもなく通り過ぎると、神は大陸中に住む旧人類達を殺戮して回った。


 許されたのはごく一部、まだ高度な文明を知らない者達や、神々に対して信心深い者、残りは審判の日を語り継ぐとして意図的に残された者たちだけだった。





 審判を行い、残された極少数の人間たちに神はこう言った。


『貴様らが言う、深層と冥界の入り口には近づくな、あそこには我らに比肩する悍ましき者達が封印されている』


 神はただ短くそう言うと、再び神の地へ戻っていった・・・・・・残された旧人類を滅するために。


 ただ、その場所には英雄の域を超えた勇者が居た。その力は神に匹敵するとさえ言われており、実際に神の地へ戻った神と勇者は一ヶ月以上戦っていたそうだ。


 毎日のように空が割れ、大陸全土を揺るがす地震に人々は世界が滅亡すると恐れたが、結果として勇者は負け死んだという。


 ただ審判を行った神も痛手を置い、足を引きずるようにして霊峰へ返ったとたった一人の生き残りはそう語ったが、それを裏付ける証拠は無い。







 かつて惑星を支配する神達に破れた宇宙から飛来し銀の瞳を持つ神達――外なる神は、巨大な樹海の奥底、虚ろな世界に閉じ込められるように封印されていた。


旧人類が生まれるよりもずっと前・・・・・・星の所有権を巡って争った神々は、外なる神達が敗北し、封印されるという結果で幕を閉じた。


 だが少しずつ・・・・・・その封印は解けようとしていたが、その時は大変長く、永遠とさえ感じられるほどだ。


 ただ幸いだったのは、外なる神達の一部はこの封印から逃れており、未だ宇宙を飛来する仲間に交信出来るという事。


 そこで彼らは同胞を呼び、外側から封印を解いて貰う事にした。


 ただし、外なる神達を封印は決して触ることが出来ない・・・・・・そこで彼らは、外なる神を封印してきたこの惑星に住まう神の姿や力を模倣できる同胞をそらから呼んだ。


 その同胞の名は■■■、人間には決して理解出来ない高次元な名前を持つ者、我らが王から生まれた万物の力を継承する次代の王は、生まれたばかりとは言え、その力は封印されし同胞達を上回るものだ。


 ・・・・・・だから、封印されし外なる神達は問題ないと思ったが、そこで運命は大きく変わり、彼らの意図しない場面へと動いてしまった。


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神話級生物が住む森 青葉 @direl

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