砂漠の集落

 いくら砂漠の真ん中といっても、風が穏やかな日の朝は気持ちがいいものだ。暖かい朝の陽ざしが、厳しい夜の冷え込みを一気に解消してくれる。昼間は水分を奪っていく悪魔となる太陽に感謝できる限られた時間だ。

 

 同じようで少しずつ形を変える砂丘は私たちを迷子にさせる。砂丘の波打った稜線が交差し、影が模様を作っている。稜線をなぞるように周囲を見回していると、遠くの方に自然にできたとは思えないようなざらつきが見えた。私は視力に自信があるほうだったが、それが何か判別できるほどの距離になかったため、そちらの方に向かっていって確認してみることにした。普段の放浪とは違って、目指す場所ができた私は、いつもより早足になっていた。


 その人工物らしきものの解像度が上がってくる。集落の跡地だろうか、複数の建物が見えてきた。おそらく土やレンガで作られているその建物は、この世界の背景に同化するように、静かに佇んでいた。


 かつての自分を知る手がかりを見つけられるかもしれない。つま先で砂をかくようにして、さらに早足で進んだ。そんなことに私の相棒が興味あるのかはわからないが、私が進む歩幅に合わせてジャリジャリと音を鳴らしながらついてきてくれた。


 「お前は歩きづらくないのか。」


 返事がないことにはなれているが、こいつに話しかけた後は、いつも静かな間を感じてしまう。


 ——ずっと細めていた目を少し緩め、ふと後ろを振り向く。だだっ広い砂漠に、今日の穏やかな風が残してくれた足跡が2本。それらの足跡は、遠くで一つに交わっている。


 「ゆっくり歩こうか。」


 10分ほど歩き到着したその集落には、入り口のようなものは見当たらなかった。街を囲う外壁の崩れたところから、瓦礫を跨ぐようにして入っていった。


 住居のような小さい建物がたくさん並んではいるものの、そこに人の気配は一切感じられなかった。古びた粘土質の壁は部分的に崩壊して粉となっており、おそらく井戸であっただろう構造物は、穴が砂で埋まりきっていた。


 集落はその原型をとどめないほどの廃れ具合だったが、砂の山ばかりしか見てこなかったからか、構造物ばかりのこの空間にどこか懐かしさのような安心感を感じた。


 今日はここで寝泊まりをしようと思い、ちょうどいい寝床を探すことにした。せっかくだから屋根の残っている場所をと思い、いくつかのまだ丈夫そうな建物の中を見て回った。


 私と相棒の二人分のスペースがあるちょうどいい建物を見つけた。ここにしようと、歩き疲れた体を労わるようにゆっくりと腰を下ろした。その時、地面についた腰に、何か硬いものの感触を感じた。気になって地面の砂を掃き、それを掘り出すと、それはどこか見慣れた金属の塊だった。


 その既視感を確かめるように相棒の方を向く。


 それは相棒の頭部と同じ形をしていた。



 

 



 

 

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機械戦闘部隊 @miz-

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