病気によって余命を告げられた少女と、彼女を支える幼馴染の主人公。
2人の間に起きた奇跡は、彼らをかけがえのない未来へと誘う。そうして手に入れた奇跡のような日々の中、ふとした時に知った少女の“想い”。そこにあり得たかもしれないもう1つの未来を見た少年はとある決心をし、物語が動き出す――。
一人称、丁寧かつ美しい文章で描かれる物語。その文体や表現1つ1つが物語によくなじんでいて、何気なくもかけがえのない少女との“日常”が輝いているように見えます。
そうして描かれるのは絶望を乗り越えた少女との、奇跡の日々。語り手である主人公の考えや言動にクセが無く、感情移入がしやすい。年相応に見たもの・感じたことが描かれているため、甘酸っぱい青春が余すことなく的確に表現されています。少女との放課後デートなんかは甘々で…、なんというか、胸いっぱいになります。
互いに互いを大切に思いながらも続く日々も、主人公があるものを発見したことによって変わっていくわけです。今ある日常と、あり得たかもしれないもう1つの日常。少女の“想い”が主人公自身の“想い”に形と名前を付けることで、物語は最終局面へと向かっていきます。そこまでの流れがとても綺麗で、尊い。初々しい2人の関係性は、まさしく「青春」そのもの。爽やかな読後感は、まさしく恋愛を描いた作品ならではだと思います。
今ある日々の尊さ。そして夏の青春をぎゅっと詰め込んだような、嫌みの無い、どこまでも爽やかさを感じられる短編作品。
輝かしい日々に隠れる儚さを知った時、“あの時”の懐かしさ、あるいは“これから”に対する期待を抱いてしまうこと間違いなし。どんな人にもお勧めできる、美しい青春作品です!