他者からの視点
「そらっちのコーハイさぁ、確か、一年のアイドルちゃんだよね?」
「そらっちヤメロ」
「いいなー、あーんな清楚系なチョー絶美少女早々居ないってのに…これだからイケメンはズルいんだよ!」
「無視ついでに検討違いな僻みやめろ。」
体育祭に向け、全校生徒合同の全体練習の今日。季節は初夏であるが、年々増してくる暑さに辟易とする。グダグダと開会、閉会の進行を確認した後の小休憩にて、俺は陽キャの友人、
ヘンなあだ名で呼んでくるところ、モテ願望強めなところが玉に瑕だが、まあ、よき友人である。暑い中ウザがらみはやめてほしいけれど。
「ほたるちゃん、だっけ?苗字も似てるし、名前も同じなんて運命的じゃん!」
「ほたる、じゃなくてケイだよ。つーか、似た苗字なんてそこらにいるだろーが。佐藤しかり、後藤しかり……」
「うげ、間違えちった!けいちゃんね、けいちゃん。」
あちゃー、と顔を顰める結城。やっぱり初見じゃみんな間違えんだな、なんて思った。それはそうと、読み間違えただけで反省するこいつはやっぱり良い奴だ。
「空見、結城、何話してんの?」
「お、りんたろくんじゃん!ヤッホー」
「くそ熱いのに元気ね、おまえ……」
声を掛けてきたのは野球部の友人、
「ウチのコーハイだよ、結城がウザがらみしてきてさ。」
「ウザい!?」
「それは災難だな。」
「ちょっとりんちゃん?」
酷くない!?なんてキャンキャン喚く様は、彼の飼っているポメラニアンのようだ。秋野はそんな結城をうざったそうにあしらっている。秋野は先程までミーハーな女子たちに囲まれていたようで、すこし疲れた表情をしていた。
こういうのを見ると、入ってきたのが星見でよかったと思う。俺みたいにスルーできるやつはいいが、秋野は丁寧に接してしまういいヤツだ。それが仇となっている現状は、どうにかしたくともできないだろう。
「あ、あの子じゃない?そらっちのコーハイちゃん!」
結城の指さした方を見れば、こちらに手を振る星野の姿があった。
「お前目ざと過ぎで引くわ」
「目ざといって…あの子一年で有名じゃん!」
適当に振り返せば、星野は小さく微笑んだ。その傍らで、秋野にドン引きされている結城が心外だとばかりに言い返している。
こちらを見て友達だろう女子につつかれている星野は、年相応で珍しく感じた。
「仲いいな」
「だよねー。一部では恋人疑惑浮上してるし、そらっち注目度アップだよ!」
コソコソとしている友人二人を小突きながら、休憩の終わりを告げる教師に向き直った。
無機物となった君と過ごす奇跡 四季ノ 東 @nonbiri94n
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