部活停止期間と勝ち戦

「──体育祭準備期間は部活動停止?」


「そーだよ」


ポカン、と珍しい表情をした星見に頷く。開いていた参考書を閉じてもう一度、そうだよ、と頷いた。


「大半の奴等にとっちゃ幸いなこと、……まぁ俺ら一部の奴等には最悪なことに、この学校は行事に力を入れる所がある。体育祭なんか学生生活で一二を争う目玉だろ。」


「はぁ……」


理解できない、と言いたげな星見。あってないような部活でも星見にとって大きな意味のある部である。その反応もわからなくもない。かくいう俺も、静かに勉強できる部室や新しく入部した星見との交流を経て、部活をより一層気に入ったのだから。


「文化祭も部活停止なんですか?」


「いんや、出し物するとこは活動するし、出さなくても任意で活動するか停止するか選択できる。」


「ちなみにこの部は?」


「俺しかいなかったから停止してたよ、去年まではな。」


体育祭も文化祭も関係ない。合ってないような部活動だから停止といいながら部室は好き勝手に使っていた。

今年は星見が居ることだし、体育祭は強制的に停止することになるが、文化祭はどうするか。


「でも螢さんと私、同じ白軍ですよね?」


「……なんで知ってんの?」


「私とあなた、結構目立つので。三年棟をちょっとだけ彷徨けば優しい方が教えてくださいましたよ」


これだから自分の面の良さを自覚してる奴は厄介なんだ。

おしとやかに微笑みながらそう言った星見に頭痛がする。コイツ、腹黒さを隠さなくなったな。


「ふふ、おんなじ白軍同士、なかよくしましょうね?」


「……うん」


強かな後輩をみて思う、──負ける気のしない体育祭なんて、はじめてだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る