迫る体育祭
ざわざわと騒がしい教室。朝8:30である現在、俺、空見螢の所属するクラスーー3年1組はホームルームが始まるのを登校してきたクラスメイトと共に駄弁りながら待っていた。
受験生として緊張感の欠片もないこの空気のなかで、イヤホンをさしたまま参考書に向き合う俺は、完璧にクラスの人間関係を絶っている。ぼっちというわけではなく、単に1人が苦にならない性分故、そんな俺のことをよく理解している友人たちは、あまり絡んでこないのだ。その分、昼時は絡まれるが。
「ーー朝から元気でなによりだが、お前ら一応受験生だよな?」
おはよ、挨拶と小言を一緒にしながらのそのそと入ってきた担任。その声に一瞬で口を閉じた生徒たちは、教壇に視線を向けた。
担任ーー
「まぁ、あれだ。夏休み前には嫌でも自覚出てくんだろ。お気楽に過ごして痛い目見るのは自分だしな。俺、一応注意したし。」
こんなことを言っているが、結構熱心に生徒を見てくれることは周知の事実だ。俺自身、
「せんせぇー、お説教はいいからはやく進めてよぉー!」
「敬語で話せ、敬語。」
前に星見が毛虫を付けていると例えた、メイクが派手な女生徒に注意する担任。しかし、その女生徒や取り巻きは意に返さずきゃいきゃいとはしゃぐばかりだ。そんな彼女たちに真面目な女子たちは冷めた視線を送っていた。いちいち絡んでくる先輩をみる星野と同種の視線だった。
派手な彼女たちは見た目と違わぬと言ったら悪いが、顔のいい奴に媚びを売り、反対に女には陰湿な手であれこれするらしい。もれなく、俺と星見はされることは違えどあいつらにロックオンされている。先生も端正な顔立ち故に今のように絡まれて辟易している。
「はぁ…ま、進めるかね。早速だが、お前らも高校生活三年目。この時期に話すことと言えば、皆まで言わずともわかるな。」
クラスの雰囲気が一気に活気づいた。先生は手に持っていた段ボールの中から真新しい赤の鉢巻きを取り出した。次いで、白い手袋も今日卓上に出される。それらを目にし、より一層明るくなる空気。
にやりと不敵に笑む担任。つられて、俺の口角もあがる。なんせ、これでも青春真っただ中の男子高校生なので。
「ー-体育祭が迫ってる」
勝負ごとに燃えるのは、男の性ってやつじゃないか?
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