自由研究

黒咲蒼

第1話

私が、その一冊の「自由研究」と、「トウカ」という名前が書いてあるものを読んだのは、夏休みが終わり少し日付けがたってからのことだった。





『8月21日

私は、自由研究の宿題をやるのを忘れていた。

今日から、「観察日記」をつけることにした。


今日は疲れてしまったので、ここまでにして、寝ることにした。』




最初のページにはなんてことないようなことが書いてあった。




『8月22日


今日は、餌をあげた。

しかし、全く手をつけてくれなかった。


私は、よくないことなので怒ることにした。


私が「めっ」というと、彼は、「そんなもの食えるか」と反抗してきたので、餌をとりあげた。』



私がまず不自然に思ったのは、『彼』という部分だ。


ペット?をそのように呼ぶだろうか…?


私の疑問は次のページで最悪の答えが待っていた。




『8月23日


彼は、今日も餌を食べなかった。


昨日は、叱るだけで許してあげたが、流石に連日となると話が変わってくる。


なので今日は軽く、お仕置きをすることにした。


彼は動けないように椅子に拘束してあるから、私は、彼の足を思いっきりハンマーで叩いた。


彼は人とは思えない呻き声をあげ、壊れたように「もうやめてください、もうやめてください」と繰り返すだけになってしまった。


私がもう一度彼の前に餌を持っていくと、彼はようやく食べてくれた。


私は頭を撫でて褒めてあげた。』




私は、たまらず、トイレへ、向かった。











数分後、帰ってきた私は、意を決して、そこから先を読むことにした。





『8月24日


彼はしっかり餌を食べてくれた!


そんな私の今の疑問は、排泄物の処理である。


私は、彼を椅子から離してあげた。


もちろん、怪しい行動をしたら即座に痛めつけると脅しながら…


彼の排尿器官に瓶を押し付け、用をたすように話たがどうやら恥ずかしいらしく、抵抗してきた。


私は、しょうがなく彼の膀胱のある部分を押して用をたす手伝えをしてあげた。



彼は、その日の夜の餌に手をつけなかった。


明日は、お仕置きが必要かな?』





私は、止まらずに次のページへと進んだ。




『8月25日


彼は、私が部屋に行くなり、「トイレへ行かせてくれ」と叫んでいる。


ようやく効いたかと、私は少し笑ったと思う。


彼の昨日の朝食には、そういう薬を入れていたのだ。でも混ぜてしまったせいで効果がかなり遅れてきてしまったようだ。


私は彼をベッドに四つん這いで縛り付けて、排泄するように催促した。


彼は、とても拒んだが、私が刺激するとすぐに排泄した。


出し始めたらもう、彼は、反抗する気がなくなってしまったらしい…』





次のページへ…




『8月26日


彼は心が折れてしまったのか、虚な目で、私のいうことを何でも聞いてくれるようになった。


その日は、彼を椅子の拘束から解放してあげていた。


夕飯を彼のいる部屋に持っていくと、彼は天井から力無くぶら下がっていた。



何がいけなかったんだろう?』




日記にはそこで終わっていた。


私は、何も出るはずのないのにムカムカした胃袋を感じながら、トイレで戻した。







彼女、『トウカ』は、今警察のお世話になっている。



私は、





亡き弟の地獄の日々を読んで、
















出てきた、彼女を……



彼女はなぜあのようなことをしたのか。




きっとそれは彼女にしか、分からないだろう。


そう思いながら、日記を火にかけた。
















『8月31日


今日家に警察がきた。


どうやら腐敗臭?がしたらしい?


私は、「知りません」とだけ返したけど、きっと明日には捕まってしまうだろう…



でも、好きな人とは片時も離れる気はないよ?


私は、今日も冷たくなった、彼の横で寝た。』

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自由研究 黒咲蒼 @Krosaki_sou

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