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 勿体無い精神で記載。説明めんどくさい病だというのにどうしてこんなに詰んでしまったのか。


◇アクター

 パイロットの中でも情報操舵技術を持つ者たちの総称。同時にデジール・アルム以外にもアセンと呼ばれるロボットに搭乗/召喚し、傭兵として契約した企業や依頼主のために戦うものたちのことも指す。

 アクターとコアフレームは一心同体であり、アクターたちはコアフレームを自在に出現させ装着することでロボットのように運用している。コアフレームはアクターが自覚を持った瞬間から出現が可能であり、彼らはコアフレームを第二の骨と呼ぶ。そのため武装や兵装に関しては完全に外付けで、それらは自身の手で整備や選定を行っている。

 基本的にアクターは生まれながらにして適性を持つ存在であり、後天的に発生することは稀。彼らは世界を構成する要素の一つ情報を明確に認識し、その力を操舵することに長ける。彼らの多くは戦いの場で活躍し、鋼の質量をもつ重機操舵技術として成熟していった。その為、基本的にアセンに乗ることを望む人間はアクターでありノーマル(後述)はアセンに関わることを恐れる傾向がある。

 だがアクターは取り扱う情報が多岐に渡り、その情報を自身の肉体として扱う性質上メンタルが強く影響するため良くも悪くも感情に振り回されやすく、真逆に感情を理解できないものもいる。それゆえ社会適合が難しいとされ現状その受け皿すらもない社会からはみ出してしまうものが大半である。


 例外的に外敵の襲撃が多い夜鳥羽諸島では、アクターは島が保有する特殊兵装であり、人間ではあるが人間ではなく業務上は兵器の一つとして管理されている。

 あくまでも彼らアクターは夜鳥羽海域の総意として鎮座する”静かの海大社”の所有物であり、各企業への契約は一時的に貸し出ししているという扱い。その為夜鳥羽諸島のアクターたちにとって静かの海大社からの指令は絶対的なものであり、反故する場合には相応の覚悟と出血を必要とする。


◇デジール・アルム

 対タークル(後述)用決戦兵器。基本的には大型のロボットだが、その内容はパワードスーツに近い機構を持つ。

 機体に精神を接続することが可能な人間、適合者を搭乗させることでタークルに対し爆発的な戦闘力を発揮する。世界調律機関所属の緋夏ヒゲノブシゲによって発見され、志四羽シシバコマ博士によって現在のパワードスーツ型の鎧としての形に再開発された。

 原型であるデジール・アルムはオリジンシリーズと呼ばれ、現在12機の存在を示唆。現在そのうちの8機を発見、保有。ただし安定して稼働しているのは2機。適合者待ちの機体が1機、未完成の機体が1機。そして紛失状態にあるのが1機。


 デジール・アルムには怒りや勇猛、衝動を情報に変換し機体の情報を書き換え、限界をも超えた力を発揮させる精鋭化と呼ばれるシステムが搭載されている。これはアクターが引き起こす同質の現象:最適化を人為的に再現したもの。

 乗り手にもっとも適した形でシステムを効率化させ、疑似的に成長し続ける生きた鎧として機能するようになる。デメリットとして成長先を選べず、代理パイロットを受け付けなくなるがそもそも代理を確保できていないので見なかったことにされている。


 怒り、勇猛、衝動といった感情情報をここでは衝動の熱アンピュルシオンと呼ばれ、デジール・アルム及びアセンのコアである死灰炉を通じ何十倍何百倍と増幅するエネルギーとして扱われる。

 ようは気合と根性と適性さえあれば稼働はするし、緻密な知識がなくとも直観的な操作で容易に活動が可能。もっと言ってしまえばこの世界のロボットのすべてがスーパーロボットの死骸を再利用して作られたミイラのようなものなので、わりと理不尽な動きをすることがある。稀に喋る。

 衝動の熱アンピュルシオンそのものは生身のままでも発現する可能性があるものの、反動があまりにも大きく自壊するリスクがあるため生身での使用は推奨されていない。


◇アーセナルアセンブル

 有人駆体。通常アセンブルと呼ばれるものとも違い、アーセナル海で運用されている旧時代の遺物。基本的に区別なくアセンと呼ばれるが、実際は全くの別物。

 基礎的な部分はデジール・アルムとほぼ同じ、というよりもデジール・アルムの原型なので使い勝手も型も変わらない。

 工業用ロボットと違う点として、これらアセンブルはコアフレームと外装の二つで構成されておりその外装もまた各機専用のものであること。一機に一人のパイロットが紐づけられること。精神を接続せずとも運用は可能だが接続を行うと大幅に機能が向上すること。

 基本的にアセンブルは発掘されるものである。旧時代主戦場だとされていた大海漠から出土するものがほぼ、パーツも含めてアーセナル海から引き上げられるもの。基本的にコアフレームの生産は実験段階に留まっている。

 そして深海域での運用が可能ということ。特にカスタマイズせずともアーセナル海内に存在する深度なら何もせずとも潜れてしまう、それほどにコアフレームと専用外装は強固。それゆえパイロットの損失率が低い。が、パイロット一人に自動的にIDが紐づけられる性質上数は少ない。

 アクターたちはこれを外付けの装備として利用しており、自身と繋がったコアフレームの上に鎧のようにかぶせる形で運用している。


◇情報

 世界を構成する要素の一つ。全てのものに存在し全ての行動に付随するもの。潮の流れのように動きが存在し、アクターはこれらを息を吸うように認識することが出来る。情報は場により濃度に差があり、それは環境条件によってことなる。情報を用いた兵器は周辺の情報を吸い上げるため、どんなステルス兵器でも情報の濃度は隠せない。

 

◇スカーラとフロー

 デジール・アルム及び現状運用されるアセンブルは基本的なことはごく一般的に想像される人型式兵器と変わりないが、特異的な点として物理的な攻撃以外に特殊な攻撃方と防御機構が存在する。

 接触を行った敵勢存在に対し、その都度攻撃性を持つウィルス……情報を送り込む。いわゆるクラッキングである。これは物理を用いた攻撃でも発生する。

 これにより相手がいかなる物理防御性能を持っていようが駆動に必要ない情報を破裂するまで送り込むことで内側から強制停止させることができる。

(メモリが対応しきれずフォルダが開けなくなるのと似たようなものである)

 これらの情報攻撃を【フロー】と呼び、タークル戦においてはこのフローが重要になる。


◇フローによる攻撃方法

 「物理的攻撃を受けたという情報」までも情報攻撃として通用するため内部と精神を繋げて戦うアクターの場合実際のダメージが精神ダメージとして直通する。殴れば勝手にフローが入る。

 それ以外にも広範囲に響く「音波」や接触し直接情報を送り込む「侵蝕」、スカーラを直接喰らう「食害」などその方法は様々。

 しかしそのフローのダメージ量はデジール・アルムのみ運用レベルの火力がある程度で、通常兵装によるフロー効果はお世辞にも期待できたものではない。……のだが、ある特殊兵装を担いだアーセナルアセンブルに関しては例外的にデジール・アルムと遜色ない火力を出せる。


◇スカーラ/防諜壁

 フローに対抗するため各自アセンブルには基礎システムの中に情報の送り込みを防ぐための防御膜、ファイアウォール……この世界ではスカーラと呼ばれるものが存在する。

 これを削り切り中枢にまでフローを到達させることができれば、それでこそ一撃加えるだけで【オーバーフロー:情報氾濫】(※情報過多によって強制停止すること)を引き起こし対象を停止させることができる。

 簡単に言ってしまえばゲームにおけるHPゲージそのもの。部位破壊などの物理破壊はゲージそのものを折る行為だと認識すればよい。そも、こういったフローによる攻撃は全大戦時に対策され廃れてさえいたのだが後述タークルの出現によりもう一度フローについて見直す必要が出てきてしまったという何ともいえない経緯を持つ。

 

◇タークル

 現在夜鳥羽諸島および冬源海域、他全世界において侵略行為を行っている謎の機械生物群。生物なのかどうかも怪しいが、今のところはそういうことになっている。

 黒い立方体のような形をしたセル状の生物であり、タークルセルとコアに分かれている。いくらセルを切り落としてもコアが生き続ける限り破壊活動を続け、そのコアでさえも独自で稼働し続ける。

 タークルは水域を生成するのでさらに厄介。水域とは水の立方体が重力を無視して空中に発生することで、その体積は15㎥から40㎥。これは隣接する水域を吸収し膨脹する性質を持ち、場合によってはその水域膨脹によって島一個まるごと呑み込んでしまう。

 この水域膨脹によってただでさえ少ない人類の生息域は浸食され、現在タークルの侵攻は世界的にも危険視されている大災害として認識されている。

 

 タークルの弱点はコアではあるが、コアを破壊することは現状不可能とされている。このコアは現在星歴2025年の時点では失われてしまった人工鋼材ヒヒイロカネで覆われており、その人工鋼材ヒヒイロカネは同じヒヒイロカネでしか加工ができない。つまり現状破壊する術を持ち合わせていない。

 しかし、ヒヒイロカネは情報を伝達する中継器としてもっとも優秀な物質でもありその伝達速度は現世界最速であるとされている。

 コア本体の内部機構は自立型AIに酷似しているためヒヒイロカネ鋼材を貫通する唯一の要素、データウィルス──つまるところ


 そういった事情からデジール・アルムはまさしく天敵であり、タークル殲滅のためデジール・アルムの稼働は世界の存亡をかけるといっても差し支えないことなのである。


◇フィアー

 敵外生命体や敵対現象の危険度を示す単位。及び敵性存在そのもののことを指す。

 モンスターやエネミーと同等の言葉であり、フィアー0が最も弱くフィアー6が現状知られる範囲内では強く危険であるとされている。

 比較的下位に位置するフィアー1-2はまとめて小フィアーと呼ばれることもある。

 ちなみにある特定の現象を起こした人間がフィアー6に認定されることもあるが、現象発火自体が稀。

 アクターはフィアー1から3の間を行ったり来たりする程度だと言われている。


◇世界調律機関。

 世界の中央とされる中枢都市シャングリラが主導する、世界を調律し世界を安定した状態に戻すための組織。世律とも。

 主に人類種の外敵を殲滅、排除することを目的とし専用の研究所や特殊兵装の所有などが例外的に認められている。その強大な権限は世界の危機と呼ばれる状態化でのみ発動し、第四の世界的抑止力として過酷な任務を行う。そのためメンバーも謎に包まれており、誰もその頂点を知らないともっぱらの噂。

 実情、本気で世界がやばいときに各国の法が邪魔することが多々あるため、それを問答無用でぶっちぎるために設立された最強クラスの暗部という面が強い。そのため扱いは国によってさまざまである。

 世界を救うためなら手段を問わないの文言に違わず本当に手段を選ばず、そのためなら犯罪者だろうが秘密結社だろうがなんでも利用する。最悪の場合「多くの救命」を優先し少数を害することもある。

 強権を持つがすべてが受理されるわけではなく、同系列に組織されている各国の守護組織などがやむを得ず調整の為割り込むこともある。


*守護組織。

 便宜上守護組織と括られているが、組織する国によって名称は異なっている。世律の縮小版。

 こちらもシャングリラが中心となり、世界中から有志を集めそれぞれの国へと事件鎮静化の為に一定期間組織される特殊戦部隊。現状ティル・ナ・ノーグ、アヴァロン、パライソ、レイヤードなどそれぞれの国が違った形で運用しているため形態も人数もまるで異なっている。

 上記世律の下位互換でありカウンターでもあるというべき存在であり、大抵の場合まず守護組織が動く。鎮圧が難しいとなれば世律が出るというのが一般的な流れ。しかし世律が活動するといっても守護組織の権限が弱まるわけではないので、守護組織は基本的に仕える国を守る形で調整に回ることになる。

 後述夜鳥羽海域では静かの海大社が相当する。


◇キラーズ

 世界調律機関に属するタークル対抗特殊部隊。

 空中戦艦アリトモス号やデジール・アルム複数機その他もろもろ複数の例外兵装を保有。基本的にはタークルの殲滅、そしてタークル種本体の生態研究を目的としている。

 指導者は外敵対抗研究家でもある志四羽シシバコマ。補佐としてアリトモス号艦長:緋夏ヒゲノブシゲ。航海士:鳴海ヒルなどが所属している。


◇夜鳥羽海域保安隊。

 名の通り夜鳥羽海域を守るためのものであり、街の防衛や近海の警邏などを行っている。

 アクターとパイロットの混成編成であり、傭兵として働くアクターたちとも持ちつ持たれつな関係である。よく仕事の取り合いをしている。


◇静かの海大社

 夜鳥羽諸島の中枢。夜鳥羽諸島の国教のようなものであり、その元締め。規律の剪定や島の所有管理などを行い、国という概念のないこの島の政治的な抗争や発展は企業連合に任せている。

 アクターを管理しているのも大社であり、基本的に夜鳥羽諸島のアクターは大社の管轄である。

 

◇虹の入江

 夜鳥羽諸島の離れ小島に存在する公式研究機関。未だ謎の多い夜鳥羽海域の深層、深海から引き上げられる遺物やデータはここが管理している。


◇企業

 主に兵器開発や土地の調査、開発などを行う。一口に企業といっても活動内容や開発内容はそれぞれで、説明しだすときりがないのだが大体好き勝手やっている。

 ライバル企業の情報を抜こうとしたり、見つかってはいけないものを代わりに消してもらったり、データ目的でアクター同士で殴り合うように仕向けたり、巨大兵器を作っておいて暴走しちゃったり乗っ取られちゃったりわりとやらかしているが兵装開発や土地の再開発面ではかなり有能。


◇ギルド

 静かの海大社の契約の元、アクターや傭兵の仕事の斡旋や管理を代理で行うグループ。現在認可を受けてるギルドは複数あるが、その中でも特に影響力を持つ4つのギルドを四大ギルド連合と呼ぶ。


 四大ギルド連合は以下の通り。

 ・ウェルテクス

  基礎的な傭兵稼業を軸に、事故でアクターに覚醒してしまった一般人の保護も行っている。

  所属人数はその性質上少ないが、何かと大事を引き起こすため警戒対象に入っている。


 ・ファウナ

  アクターでありながらも開発を行う技術屋が集う、自由工房とも。

  企業:キクラゲとは犬猿の仲とされるが、稀に共謀して大変なものを作り出してしまう。


 ・フウジン

  主に戸口や調停に回る相談窓口。傭兵として前線に出ることは稀。

  大抵の傭兵は一度はここに怒られている。


 ・イグニス

  戦闘を目的とした武装集団。定期的に殲滅遠征を行い海洋の治安維持にも貢献している。だがしかし保安隊と仲が悪い。


◆新約冬季殲滅遠征

 通称冬季戦。南部から抜けることができる門の先に存在する島国パライソ、そのパライソとの契約によって冬季の間代理で防衛作戦に参加する大規模作戦のこと。

 アセンはその特性上冷寒状態では稼働効率が著しく落ちる。そしてアーセナル海域の季節による気候変動は星全体で見ても振れ幅が広く、事実上冬季は一部を除いて業務停止が避けられない。これは敵性物であるタークルも同じである。

 が、パライソでは一年中気候も安定している。そしてアーセナル海域が近いことによりそこから逃亡したタークルが冬季の間に押し寄せてしまう。

 その災害とも言えるタークル群を討伐すべく特設組織「害象殲滅組合」を通して冬季の間公認の狩りを行うというもの。尚内容は非常に過酷なもので生きてるのか死んでるのか分からないぐらい働くことになる、だが相応の褒賞を得ることが可能なため作戦参加に手を挙げるものは多い。


◆デジール・アルム

◇サマネア

 紛失状態になった1機。最初に稼働成功した希少な機体だが、大規模作戦終了後の哨戒任務時にアクターもろとも行方不明になっている。

 実のところクリーガァがその行方不明になったアクターのコピー体である。そしてサマネア自体も存在はしているものの、すべてのデータを吸い上げるためパーツをすべて解体し大社預かりになっているため現状起動は不可能な状態。

 そもそもサマネア自体開発段階のβ版みたいなものなので、起動にこだわる必要があるかどうかいわれるとちょっと悩ましい。なので情報権利を占有した大社によって疑似的にデジール・アルムと同じ特質を持つ武装を生成する計画が水面下で進行していた。

 夜鳥羽海域でタークルの迎撃に困っていないのは、既にタークルへの対策がとられていたからなのだ。

 ちなみにサマネアを元にした対タークル特殊兵装は雷撃の属性を持つ、それゆえ市街地での使用は控えるように通達されている。


◇レイライン

 現代でいう所の電子的ネットワークのこと。夜鳥羽ではSNSのことをレイラインと混同して呼ぶ。

 音声入力機能の精度が高く、喋ったままで普通に文字化されるためチャットであってもマイクを通して喋っていることも多々ある。元々別の技術によって精度が高く作られたのだが、大抵の人間はそのことを知らない。


◇第三言語

 アクターの中で使われる特殊な祝詞、古い表記で力ある言葉と呼ばれている。

 実際にはただの言葉のように聞こえるが、アクターたちの手にかかるとその言葉そのものが力を持つようになる。機体を通して使えばその効力は何百倍にも膨れ上がり、武装の機能上昇や機能外の挙動を引き起こす。

 ”私は鳥に、私は炎に、私は世界へ”という祝詞は最初に覚えるべき言葉として共有され、誰に教えられるわけでもなくアクターはこの言葉を行使する。ちなみに意味合いとしては「生物に、現象に、魂に、私は全てに変貌する(できる)」といったもの。


◇シャングリラ

 大海嘯と呼ばれる世界的災害によって多くの国が水没するという事件の後、国家というシステムが一時的に麻痺し各企業による競争が激化した。その競争の影響力はすさまじく、大規模な企業間戦争をきっかけに国家解体戦争にまで発展する。

 しかし多くが戦禍に呑まれる中、その戦禍の仲裁と調停、または双方の破壊によって勢力を増し揺るがぬ地位を得たのがかつて武力国家として恐れられたシャングリラである。

 言ってしまえば世界的災害と戦争によって疲弊した世界を、武力とコネ、そしてアブノマリーの力でシャングリラは文字通りすべてを制した。

 しかし一度世界を制したシャングリラだが、そのまま世界の頂点に立つわけではなくシャングリラもまた国としての規格を捨て一都市と変革。企業間戦争は続行し、シャングリラもまたその参加権を所有するようになった。

 が、シャングリラが作り上げ浸透させた”学院”と”資格”による恩恵はどこからでも無視が出来ずどの都市もシャングリラを敵に回すことはまずない。シャングリラもまた迎撃行動のみとなり、表向きは沈黙の状態を貫いている。

 現在は中枢都市と呼ばれ、多くの人々が管理と調整に明け暮れている。


◇ティルナノーグ

 かつてはシャングリラと共に世界を制する二大国家のうちの一つとして名をはせていた大国。大海嘯後の統一会議後は都市に変革、現在は特に大きな動乱もなく世界のなかでも平和な都市の一つに数えられ、観光業を中心に大きな賑わいを見せている。


◇資格

 後述アブノマリーの脅威と異能を管理すべく設立された管理システムそのもの。仰々しいことのようだが、実際は通常の技術資格などと同じく試験を通じてその力の使用権利を与えるというもの。

 運転免許や栄養士免許のようなもので、学院などの教育機関でそれぞれの勉強と試験を受けることができる。現在はアブノマリーとノーマルの区別も小さくなり試験を受けることだけなら誰にでも可能、多少の金銭が必要になるが資格とはそういうものである。

 今作のアクターたちも超重機運転免許、重火器物使用免許といったものを大社を通じて資格試験を受けており、資格を得ることで外海の仕事を請けることができるようになる。ちなみに所有権は一括で大社が管理している。

 

◇大海嘯

 かつて世界を襲った大災害、原因は諸説あるが宇宙から飛来した巨大な隕石によるものだとされている。

 元々水位の上昇が起きていたことも重なり、世界は各方面大きな打撃を受けることとなった。


◇ノーマル、ハイエンド、アブノマリー

 かつて多くの国を抱いた世界だったが、幾多の歴史と災害の中で民族的人種という区別とは別に根本的人種といった区別が生まれている。

 ノーマル、ハイエンド、アブノマリーと区別されているが実際は世代の移り変わりを示す現象であり、世代順で記すならノーマル(旧世代)、アブノマリー(第一世代)、ハイエンド(第二世代)である。

 その昔、アブノマリーと呼ばれる人種はその歴史の中でも幾多の困難に直面してきたもの、ある大災害を機に現れ始めた異能を持つ人間のことを指すとされていた。これは出現時は突然変異として唐突に現れ、血統として後任に才能をある程度引き継ぐことが出来る。やっていることは一般人と大して変わりはないのだが、その異能の持つ影響力は今までの歴史の中でも特別大きなものだったため区別されるようになった。アブノマリーの出現と同時に自然と超常の力を持たない旧世代の人間たちはノーマルと呼ばれるようになる。

 新たな世代に突入した時、そう簡単に世界は順応できなかった。ノーマルはアブノマリーに対して差別的に扱い、アブノマリーもまたノーマルに対して懐疑的だった。しかしその抗争は長くは続かなかった。

 その時代の二大国家のうちの一つ、シャングリラによる世界的調査によって世界人口の六割がアブノマリー的な才能を秘めていることが発覚した。つまり大抵の人間がその気になれば異能を手にすることが可能だということが分かった。この報告をシャングリラは世界中にそれも大々的に流布させ、どの都市よりもいち早くアブノマリーの持つ異能を”資格”によって管理するプログラムを完成させていたシャングリラはそのテンプレートを公開した。

 同時期同じく二大国家と呼ばれていたティルナノーグは、ノーマルとアブノマリーの共存をうたっていたものの施策が稼働せず、驚異的な速度で行動を起こしたシャングリラに出遅れてしまったことをきっかけに二大国家の座を降りることになった。


 アブノマリーの異能は各自”資格”に管理され、一時的に世代間的競争は落ち着きを見せたころ。アブノマリーとノーマルの中で意識変革が起きはじめた。確かにアブノマリーの力は強力だが資格制度のおかげで普段はノーマルとほぼ変わりない生活を送れるようになっている、そしてノーマルと呼ばれている人間たちの中でもアブノマリーを凌駕するものたちもいる。適性でいえばそこまでアブノマリーとノーマルに人間的な差はないのではないか? と。

 時代が進みアブノマリーとノーマルという単語もまた蔑称となりつつあったため、若者世代を発祥に”ハイエンド”と呼ばれる共通の名称が使われるようになった。

 この”ハイエンド”には特に決められた意味はなく、お互い別の種族ではあるが認められる友であるといった意味合いだったり、単純にアブノマリーやノーマルと呼称することを避けるために使うこともある。

 未だにアブノマリーとノーマルの間に存在する亀裂は埋まることはないが、無理に融和せずともお互いがうまくやって行けさえすればそれでいいという精神。お互いを侮蔑するわけでもなく、かといって崇めるわけでもなく。ただ尊重しあう。そういった説明の難しい、だが確かに存在する祈りの形の一種が”ハイエンド”という単語である。

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