第3話 ちょっとした冒険
「Cちゃん、よろしく頼むよ!」
「ピュ!」
残機が回復した後、草とキノコの選別を始める。
Cちゃんに身体に潜伏してもらって、毒の反応が出たら吸って吐き出してもらう。そうして耐性を付けるのと選別を同時に行う。
「ぐっ……」
今までの苦労に比べたらこんなもの……! 気合いで毒を耐え抜く。おそらく普通だったら致死量だと思う。
ただ、四肢をもがれようが、身体が一部になろうが生存してきた私がこの程度で死ぬ訳にはいかない……!
ちなみにあのクマは例外ね? あれは完全に意識の外だったから普通に死んだ。
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ユミリア・フォース 女 e10歳
種族:人間 レベル1
〈基礎値〉
筋力:9(↑8)
耐久:1
敏捷:3(↑2)
器用:5(↑4)
運 :1
魔力量:19(↑18)
魔力質:X(↑1)
〈職業〉
『王女』レベル0
〈スキル〉
『棒術』レベル1(New!)
『鑑定』レベル1
『潜伏』レベル6(New!/↑5)
『毒耐性』レベル1(New!)
『麻痺耐性』レベル2(New!/↑1)
『衝撃耐性』レベル1
『精神耐性』レベル25(↑24)
『魔力注入』
〈恩恵〉
『王家のプライド+』(1)
『不滅の魂+3』
『不変の姿+』
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色々と増えたが、鑑定は魔力が放出出来ないから使えなかった。ただ、一度効果を実感出来たものはメモのように扱えた。
識別のような気がしないでもないが、鑑定枠らしい。
身を削って検証する必要があるが、メモの様に扱えるのは素晴らしい。私はほぼ全ての出来事を覚えているけど、膨大な記憶の中から一部を抽出するのは時間が掛かるから、大いに助かる。
時間は時に命取りになるからね。
「ピュー!」
素晴らしい。どうやらCちゃんが毒の効果のあるものと麻痺の効果のあるものを攻撃手段として手に入れたようで。
効果は弱いものの、時間さえかければ魔物も倒せそうだ。
「Aちゃんとスラちゃん、留守番よろしく」
「「ピュ!」」
2体とも預けた理由は模擬戦が出来るから。教えたことを確かめながら、枝と近場のアイテムを集めてもらう仕事を与えて出発した。
今日は少しばかり冒険をする。
「グオォォォ!!!」
くっ、こんな時に。素早く身を屈め、衝撃に備える。
幸い、こちらの方向には向いていないようだった。
「みんな、大丈夫!?」
咆哮に気を取られ、動けずにいる様だった。
仕方なくCちゃんを頭に乗せ、フリルを抱き抱える。その際、Bちゃんにはフリルの足から離れてフリルの頭の上に乗ってもらった。
近くにいたゴブリンも同様に硬直していた。これはチャンスだ。
3体もいるが、Cちゃんに麻痺攻撃を頼んだ。硬直しているからか、全弾命中する。
その際、硬直が溶け、こちらに突っ走ってきたが、ゴブリンはバカだから単調な攻撃が多い。
落ち着いて対処すれば必ず撃破出来る……が、数が多い。
Bちゃんと手分けして囮になってフリルに噛んでもらう。万全な状態では無いものの、Cちゃんの補助ありでゴブリンよりかは素早かった。
「Bちゃん!」
「ピュイ!」
逃げる傍ら、武器持ちと入れ替わる……と思いきや、3体ともこちらに矛先を向けた。流石はゴブリン。Bちゃんを相手にするより私を犯したい欲が勝ったか。
だけど甘いね。うちの子たちは棒術を習得してるんだよ。
既に手負いの1体がフリルの攻撃によって倒れ、残りはちゃんのちくちく攻撃とようやく当たったCちゃんの毒攻撃よって1体撃破。最後はBちゃんがゴブリンの顔に覆いかぶさって窒息死させた。
私はスライムを愛すると共に、ゴブリンを同じぐらい憎んでいる。単純に生理的に受け付けないというのもあるが……。やはり女の敵(男の娘含む)であるということだろう。
ゴブリンに犯されるのはもう経験したくない。
故に全力で回避する、逃走する術は持ち合わせている。なお触りたくもないため、緊急時以外は触れない様にしている。
「それ大丈夫?」
「ワゥ?」
フリルがゴブリンの肉を食べている。記憶が正しければ不味かった筈だが……平気そうだから大丈夫だろう。
いざとなったらCちゃんで毒抜きすれば良いしね。
骨はエネルギーの為に回収する。それと持ってた武器も回収。棍棒だった。筋力が上がったら持たせよう。
ゴブリン3体。パーティー換算だとしても充分な経験値量の筈だが、レベルアップはなし。
種族レベルが上がれば色々出来ることが増えるから、3体以下……出来れば2体を見つけ次第やりたいところだ。
石や枝はエネルギー効率的に積極的に集めたい。1つにつき1エネルギーだから小さいものでも集めれば効率が良いのだ。
ただ、枝の方は折れても1つのものとして換算される。折れた片方の枝がゴミ箱に入れば、たちまちもう片方も消滅する寸法だ。
死体は例外。各部位ごとにエネルギーが分かれている。全部位が揃ってればボーナスエネルギーが出るが、大抵何かに使う為、そんなことはない。
人間の死体だけは用途がないから全部入れるけどね。というか仮にも私だったものをエネルギー以外で使うとか、そこまで人として外れてない。……いや外れてるか?
死体は放っておくと血の匂いで集まってきたりしちゃうから、エネルギーにさっさと変えた方が良いはずだ……多分。
「ギー!」
さっきと同じ方法で私が囮になってそれぞれが攻撃する。
少し攻撃を与えてみたり、トドメを刺したりしてみたが、効果が無かった。やはり種族レベルは上がらない。
十数体倒したところで変わらない為、素材集めに切り替えた。ゴブリン倒しは二の次で良い。なお、途中でスライムが2匹合流した。
Bちゃんに変わりDちゃんにフリルの足を、EちゃんにはCちゃんを頭に乗せてもらう事にした。
スライムはいくら増えてもいい。雑食だから。それによって進化条件が変わってくるが、今は選ばない。フリルはゴブリンの肉でも良いらしいからそこで調達するとして……。
他の子は仲間にしても1体かな。食糧が足りなくなっても困るし。私は鑑定が済むまでは基本雑食かな。
まあ鑑定が済んでも耐性上げのために食べるけど。
お昼になり。スラちゃん、Aちゃんを加え、Bちゃん、Dちゃん、Eちゃんに待機してもらう。
「Aちゃん他の子吸収した?」
「ピュイ!」
心なしか大きくなっていたけど、気のせいじゃなかったみたい。
「じゃ行こっか」
棒を持つのもぎこちなかったはずなのにもう普通に持てるようになってる。早速スラちゃんに棍棒を持たせた。
「ピューーー!!!」
棍棒を持ったスラちゃんはとても強く……。フリルに乗って棍棒を振り回せばゴブリンくらいは余裕でもっていくぐらいだった。
ここで深追いはしない。オークやコボルトなら倒せるかも知れないが、やはり群れられたら危険だ。
薬草をたくさん集めることに切り替える。薬草はゲームみたいに即座に回復するというものではない。どちらかと言うと煎じて飲んだり傷口に塗り込んで自然回復を早める効果がある。
が、ヒールは別。即座に回復できる。薬草を食べまくってヒールを獲得する方法がある。人間だと一朝一夕では到底無理だが、魔物ならそれが可能だ。
今後、無茶をする場面は増えてくと思うから、是非とも覚えさせておきたい。
「ギー!」
「あっつ!」
不意に後ろから火の玉が飛んできた。ゴブリンメイジだ。
手で受けてしまった為、スラちゃんで消化し、薬草を塗り込む。幸い敵は1体。ここは視界から一度外れ、潜伏してからスラちゃんを被せる。
「吸収して!」
「ピュー!」
生きたまま吸収するのは難易度が高いが、その分吸収率も上がる。
窒息死する前にスラちゃんを剥がし、Cちゃんで麻痺させた後、足から取り込ませる。
そうしてゴブリンメイジを吸収したスラちゃんは……。
「ピュー!」
「え?」
氷魔法を習得した。
思いがけない幸運。溶かして水を貯めよう。少し早いけど今日は撤退だ。
夕方になって。小屋に帰還するとフリルとスライムたちに穴掘りを命じる。
スラちゃんだけは別のとこに連れて行って。
「今から火起こしの仕方を教えるね」
「ピュ!」
きりもみ式で火を起こす。30分ほど経ったところで。
《スキル『火魔法』を獲得しました》
早いな。火がついた。
「火を起こしながらこの穴に氷を入れてほしいの。手を動かしながら魔力が回復し次第お願いしたいんだけど、出来る?」
「ピュ……ピュー……ピュ!」
微調整して位置を決めたようだ。
「火魔法が習得出来たらやめて良いよ」
残りは1体ずつ教える。こんな森の中で一斉に火を使ったら大火事になる可能性があるからだ。
土はいらないから適当に食べさせる。Eちゃんがこれで土魔法を覚えたらしい。
そろそろ本格的な罠を。バリアは日付が変わる頃にはおよそ9万になっているだろう。1日で1万。そう考えると早急に作った方が良い。
まずバリアの外周に沿って穴を掘る。見え見えの落とし穴しか出来ないが、ひとまずはこれで良い。というか罠張って間違って落ちたら私が死ぬ。
これを3つほど作る。これ以上は暇な時で良い。
体力が付くか、回復手段が整えば、鋭利なものを突き刺して作ろう。
後は10個ずつ薬草を食べさせる。フリル用と普段使い用を残して3体分。スラちゃん、Aちゃん、Bちゃんに食べさせて、Bちゃんが回復魔法を覚えた。
残りはスラちゃんとフリルは覚えるまで毎日10個。Cちゃん、Dちゃん、Eちゃんはとりあえず10個かな。そこら辺に生えてはいるものの、有限であることには変わりないからね。
そしてDちゃんとEちゃんにはここのルールを教えて、私はトレーニングとスキル取得に励む。
今は順調だけど、あのクマと今後。経験上、イレギュラーは確実に起こると見て無理に行かなきゃいけない。
今はまだ決めてないけど、ソロで行くにしろ、仲間と行くにしろ、強くなることは最優先だ。
以前の私は逃げと回避特化の人間だった。でもそれは仲間がいたから。守りきれないと判断したら連れて逃げる。そのスタイルを貫いてきた。
でも今は仲間がいない。
ただ、ステータスを見る限りは限りなく0に近いとは思っているが……。
とにかく来るべき時に備えて修行する。全盛期を超えてコネを作るんだ……!
黒金の姫の伝説 〜手違いから始まるヘルモード回帰〜 影 魔弓 @kagemayumi
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