絵の中へ

「これがスマホって言って、何でもできるんですよ~」

「ほう」

「ラインって言って、昔の手紙みたいなやつで、一瞬で相手に届くんですよ」

「それは便利だな」

「カメラで写真を撮ったり」

 俺は果心居士にスマホのシャッターを押し、写真を撮る。

「ほら」

「わしが写っておる」

「こんな感じで色々撮ってます」

 俺はカメラロールを遡って見せる。

「ほう、ほう」

「絵で描くよりも便利だな」

「そうなんですよ。でも絵も味があっていいですけどね。あ、最近の絵師の作品見ます?」

「興味があるな」

 俺はカメラロールに保存してある神絵師達の作品を見せる。美少女系が多い。

「目が大きいな」

「まあアニメ漫画作画はそういうものです」

「どれ、動かしてみるか」

「えっ、出来るんですか⁉」

「魂が込もっていればな」

 果心居士は「ふん」と気を込めると、スマホの中の美少女が立体的に動き出した。

「すげえ、さすが神絵師!」

 俺は絵と写真を撮る。記念だ。

「こっちもやって下さいよ!」

 別の神絵師の作品や原画展の写真を見せて、動かしてもらった。

「すげえ、さすが師匠!」

「まだ、お前の師になるとは言っておらんぞ」

「もういいじゃないですかあ。師匠と弟子で仲良くやっていきましょうよお。ほら、スマホの機能とか色々興味あるでしょう?」

「それは確かにあるが……」

「ほら、次はトゥイッター行きますよ。こんなバズリ動画があって」

「ほう。面白いな」



「で、修行って何するんですか?」

「だから弟子にするとは……」

「じゃあ早速、絵の中へレッツゴー」

 俺はスマホに保存してある美麗イラストを出す。

 ラベンダー畑のイラストだ。

「仕方ないのう」


「へえ、絵の中ってこうなってるんですねえ」

 さすが神絵師の作品の中だ。まるで本物かのようにリアルな世界になっている。

「うわ、ラベンダーの香りまでする」

「どうやら作者の見た風景の再現のようじゃのう」

「何処かな、富良野かな」

「らべんだー? ふらの?」

「ああ、初めて見ます? この紫の花がラベンターで、富良野は北海道、ええと蝦夷地にある地名です」

「そうか。外国の花は、わしもまだ知らないものが多いでの」

「そういうのも教えていきますからあ」

「分かった分かった、弟子見習いくらいにはしておいてやるわい」

「やった~」


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果心居士を召喚してしまいました。 夢水 四季 @shiki-yumemizu

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