第6話 エンディング

 石段を下りるとすぐに灯里あかり達のグループと出会った。彼女らを見つけるなり、どちらからともなくそっと手を離す。


「おっ、美織みおなぎ、こっちこっち~」


 部長が大きく手を振る。


「大丈夫だった?」


「……なにが」


「いや、迷子だったでしょ」


「……普通だった」


 それってどういう感想、と部長が苦笑いを浮かべる。


「遅くなりました」


「うん、お疲れ様」


 凪の表情から察したのだろう。

 部長が優しく微笑む。


「ほーら、最後の、始まるよー」


 一人が無邪気に声を掛ける。

 いつの間にか美織の両側には既に先客がいた。

 先ほどまでの二人きりの時間が夢ではないかと錯覚してしまう。

 最後の大花火――ナイアガラが始まる。

 綺麗な光の波にみんなが見入る中、不意に振り向いた美織と目が合う。その瞬間、彼女がウインクをした――ような気がした。



     完

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る