エピローグ 写真


 その後、数分経ってから花火が完全に打ち終わり、立ち止まって夜空を見上げていた人たちも各々歩き出していた。そして一輝は隣に居る綾香の方を見ると。


「花火終わりましたね」


 少し愁いを感じる口調でそう言うと。


「ええ、そうですね」


 綾香も少しだけ寂しそうな口調でそう言った。そして、


「……それじゃあ一輝くん、そろそろ良い時間ですし、私たちの今日のデートはこれでお開きとしましょうか」


 綾香はそう言ったので。


「ええ、分かりました」


 もっと一緒に居たいと思いつつも、これ以上遅くなるわけにもいかないと自分に言い聞かせ一輝はそう言った。すると、


「それじゃあ一輝くん、私はお父さんに迎えに来てもらうようお願いするので、一輝くんもそうして下さい」


 綾香はそう言ったので。


「ええ、分かりました、そうします」


 一輝はそう答え、ポケットからスマホを取り出すと、自分の父親に向かって電話を掛けて迎えに来てくれるよう連絡をした。


 そして、一輝は父親に迎えを頼み、綾香も電話を終えたのを確認して。


「えっと、綾香さん、迎えが来るまでの間、僕たちは何をして過ごしますか?」


 一輝が綾香にそう質問をすると。


「そうですね……取りあえず、私は周りたいお店は大体周れたので、一輝くんが周りたいお店があれば私は付き合いますよ」


 綾香はそう言ったので。


「そうですね……僕も周りたいお店は一通り周れましたが、迎えが来るまでの間はもう少しくらい屋台を見て周りませんか? その、残り少ない時間でも僕は綾香さんと一緒に夏祭りを楽しみたいので」


 一輝がそう答えると。


「一輝くん……分かりました、私も一輝くんとは同じ気持ちなのでそうしましょう」


 綾香はそう答え、二人は再び屋台がある場所へと手を繋いで歩き始めた。





 その後、二人が屋台を見て周って数十分経った頃、二人の両親が迎えに来たのだが、一輝の父親と一緒に来ていた一輝の母親が綾香の両親に挨拶をしたいと言ったので、二人の両親が初めて顔を合わせる事になった。そして……


「初めまして、私は一輝の母でこっちが一輝の父です、いつも息子がお世話になっています」


 綾香の家の車が置いてある傍の駐車場で一輝の母親が綾香の両親に向けてそう挨拶をすると。


「初めまして、私は綾香ちゃんの母親です、こちらこそいつも娘がお世話になっています、ほら、貴方も」


 綾香の母親がそう挨拶を返すと、隣に立っていたサングラスを掛けていた長身の男が、


「……初めまして、綾香の父です、それと佐藤くん、今日は娘をデートに誘ってくれてありがとう」


 一輝の両親にそう挨拶をした後、綾香の父親は一輝の方を見てそんな事を言ったので。


「い、いえ、これくらい彼氏として当然の事です」


 普通にしていてもかなり威圧感のある綾香の父親の姿に一輝は内心かなりビビりつつも、なんとかそう言葉を切り出した。すると、


「ところで綾香ちゃん、今日は無事にデートをする事が出来たの? お父さんは綾香がナンパされてないかってずっと心配していたのよ」


 綾香の母親はそんな事を娘に聞いて来たので。


「それは大丈夫です、私が男の人に話しかけられていた時に一輝くんがかっこよく助けてくれたので」


 綾香はそう答えると。


「凄いじゃないか一輝、お前がそんな事をするなんて!!」


 一輝の父は嬉しそうな表情を浮かべてそう言ったのだが。


「いえ、大した事は無いよ、それに結局ナンパされてた訳じゃなくて綾香さんは知り合いと話をしていたのをナンパされていると僕が勘違いをして余計な事をしただけですから」


 一輝はそう言ったのだが。


「確かに結果的にはそうですが、一輝くんが私の為に動いてくれて私はとても嬉しかったですし、あの行動を観て一輝くんなら今後私が本当にナンパをされても守って貰えると思いましたよ!!」


 綾香はそんな一輝をフォローする様にそう言ったので。


「そうなのね、そんな風に綾香ちゃんを守ってくれる佐藤くんなら今後も安心して綾香ちゃんの事を任せられそうね、ねっ、貴方!!」


「……まあ、そうだな」


 綾香の母がそう聞くと、綾香の父は渋々といった様子でそう言った。すると、


「それにしても立花さんの浴衣姿は本当に綺麗ね、もし立花さんさえ良かったら写真を一枚撮らせて貰えないかしら?」


 唐突に一輝の母親がそんな提案をして来たので、その言葉を聞いた綾香は、


「えっと、その、そう言って貰えるのは嬉しいのですが、写真に残るのは少し恥ずかしいので……でも、一輝くんと二人で写真を撮って貰えるのなら私は良いですよ」


 隣に居た一輝の顔を上目遣いで見上げながら綾香はそう言ったので。


「えっと、綾香さんがそれで良いのなら僕も良いですよ」


 一輝がそう答えると。


「えっと、それならお義母さん、お願いしても良いですか?」


 綾香は一輝の母親に向かってそう言ったので。


「分かったわ、それじゃあ二人とも、ここだと暗いからあそこの電灯の下に並んでくれないかしら?」


 一輝の母親はそう言って、二人は電灯の下へと移動した。そして、


「それじゃあ二人とも撮るわよ、はい、チーズ」


 四人の大人達に見守られながら、一輝の母親にそう言われ二人はスマホで写真を撮った。そして、


「うん、二人ともちゃんと取れてるよ」


 一輝の母親にスマホ画面を見せて貰った綾香の母が二人に向かってそう言ったのだが。


「……えっと、出来ればもう一枚だけ撮って貰えませんか?」


 少し不安そうな口調で綾香はそう言ったので。


「えっ、あっ、うん、良いわよ」


 一輝の母親はそう言って、もう一度スマホを構えると。


「それじゃあ行くわよ、はい、チーズ」


 一輝の母親はそう言ったので、一輝は再びポーズを取ろうとしたのだが。


「……チュ」


「!?」


 突然、一輝の頬に柔らかい感触を感じて、一輝が驚いたと同時にシャッターが鳴った。そして、


「「「「……え?」」」」


 一輝と親四人が固まっている中、綾香は一輝の元から離れて写真を撮った一輝の母親の元へ駆け足で行って、スマホ画面を確認すると。


「ふふ、ちゃんと撮れてますね、あの、お義母さん、今日撮って貰った写真は後で私に送って貰えませんか?」


 綾香はそんな事を言ったので。


「え? ええ、勿論いいわよ」


 未だに少し驚いている一輝の母親がそう言うと。


「ふふ、ありがとうございます、それじゃあお父さん、お母さん、そろそろ帰りましょう」


 綾香は自分たちの両親に向けてそう言ったので。


「……ああ、そうだな」


「ふふ、意外と綾香ちゃんって大胆なのね」


 綾香の両親は各々そんな反応をした後。


「それじゃあ私たちはこれで失礼します、今後も綾香ちゃんの事をよろしくお願いします」


 綾香の母親は一輝たちの家族一同にそう言ったので。


「あっ、いえ、こちらこそよろしくお願いします」


 一輝の母親がそう言うと。


「それじゃあ一輝くん、さようなら、それと今日はデートに誘って頂いて本当にありがとうございました!! また一つ夏休みの特別な思い出を作ることが出来ました」


 綾香は一輝に別れの挨拶をすると、そのまま両親と共に自分たちの車が置いてある所へと歩いて行った。そして……


「……一輝、あんた本当に立花さんと付き合っていたのね」


 一輝の母親が自分の息子に向けてそんな事を言ったので。


「いや、そうだけど、もしかして今までは付き合ってないと思ってたの?」


 一輝がそう言うと。


「いや、そんな事は無いけど、何というか、さっきのを見せつけられてようやく現実を受け入れらたって感じで……とにかく一輝、あんないい子あんたは今後は二度と付き合えないから絶対に別れるんじゃないわよ!!」


 一輝の母は力強くそう言ったので。


「……それは色んな人から言われてるからよく分かってるよ、それに僕だって綾香さんと別れたくないし、絶対に別れない様に頑張るから大丈夫だよ」


 一輝はそう答えた。


 こうして、ちょっとしたハプニングなどはありつつも、二人の夏祭りデートは無事に終わりを迎えた。











 更新遅れてすみません、それと最後まで読んでくれてありがとうございます。

 この番外編を書いたのは、一輝の少しはカッコイイ姿を書きたかったのと、最終回の後も二人が仲良くしている所を知って貰えたら良いなと思い書きました。

 正直上手く書けたかどうかは分かりませんが、少しでも楽しんで貰えた嬉しいです。 

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罰ゲームで学年一の美少女に告白したけど何故かOKされました 向井数人 @tyuuni

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