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藤本宵

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 「博士、新しいロボットが完成したって聞いたのですが、本当ですか?」

ここはA国の研究所。とある博士と助手は新しいロボットの開発に勤しんでいた。

「ああ、本当だ。今まで数々のロボットを作ってきたが、これほどの出来栄えのものは無かっただろう」

「どんな所が従来のものと違うのです?」

「まず、特殊シリコンを使って、ロボットを極限まで人間の肌に近づけた。骨格も丈夫にし、関節の動きもなめらかにした。それから人間の食べ物は口から食べ、休息時はちゃんと布団に入るのだ。頭脳と感情センサーは繊細な人間に合うように感度を上げ、人間特有の忘れっぽさも兼ね備えている」

「ほほぉ、面白いですね。人間そっくりじゃないですか」

「いつか本当にロボットと友達になるかもしれないなあ。ハハハハハ」

「あれ、ここに付いているボタンはどんな役割をしているのですか?」

助手が博士に尋ねた。

「ああ、それか。電源スイッチだ」

「でもロボット自体が布団に入るのでしょう?そんな機能要らないですよ」

「いやあ、私までもがこのロボットを人間と見間違ってしまってな。まどろっこしいのでそのスイッチで区別しているのだ」


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