〈コレクトマニア〉

「収集癖」を広辞苑で調べると、(貴重なものばかりでなく)つまらない物でも収集したがる病的な癖、とある。

 チョット酷すぎない?

 ……と思うが、〈白い巨塔〉に棲息していた頃を思い出す。

 論文を書くたび別刷りも貰い、それをクリアファイルフォルダーに貯めた。業績集に別刷りを添えることが、当時は昇進の際の作法だったからである。

 単に論文の数を増やすだけなら、商業雑誌が簡単だし原稿料も頂ける。逆に評価の高い学会雑誌では、査読という関門を通らなければならないし掲載料も請求される。それでも懲りずに「今度こそは」と挑戦し続けた。

 あれから四半世紀、今は新聞投稿に鞍替えし再び挑戦中。


収集家:「病的な」とはひどすぎる! むかし論文いまは新聞


「掲載された朝はゴキゲンね」と妻に笑われると、確かにそうかも……と素直に認めるしかない。

 妻は記事を切り抜き、神棚に供えてくれた。大分貯まった頃、〈白い巨塔〉時代の習慣で、クリアファイルフォルダーを何冊も用意。

 さらに、爺医の固いあたまを茶化して、クリアファイルフォルダーは〈いしあたま〉と命名した。最初のファイルを表紙と目次に使えば、全部で78件の切り抜きが納まるはず。日付を印字した台紙に、切り抜きを1件ずつ貼る。

 クリアファイルフォルダーが一杯になったら、投稿原稿の体裁を整えて製本しよう。それも、背表紙がつくボリュームは欲しいので、終の楽しみとして、1本でも多く投稿を続けたい。


 ふと、ファイル〈いしあたま〉の使い道が気になりだした。




 そうだ!


 通夜の席で酒の肴にしてもらおう。

 会葬者の口が軽くなるように、最終号のタイトルは「会葬御礼」に決めた。


 でも執筆はもう少し先にしよう。

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🧠 でぃめんしあ 🧠 医師脳 @hyakuenbunko

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