筒井康隆センセ

     *


 ここまで書き連ねたところへ、筒井康隆センセがタオルを投げてくださった。


「だから文学作品において、展開は作家の自由である、ということをまず言っておこう。そこにこそ小説の自由さがじとつ存在するからだ。しかしながら、だからと言って小説の展開がそんなに恣意的であっていいのだろうか。『展開』という以上は小説を構成するうえで、内容が次第に開かれたものになって行く必要はあるのではなかろうか」――。


「例えば作家が、自分の書きたいこと、書きやすいことから順に書いていった場合、最後に近づくにつれて作家の書きたかったことの残滓が、まるで金魚のウンコのように書き加えられているだけという結果になってしまう。しかし、例えばその残滓に、テーマの盛り上がりを読者に感じさせるような工夫が凝らされていれば別だ。だが別段、そんな苦労をしなくても、作家に校正力さえあれば自然な展開でテーマをクライマックスに導入することができるのである。だがどんなに苦労しても、そうならない場合も実はある」――。


 最後のひとことで、心も筆もが折れた。

 〔筆者注:駄文を書いているのはパソコンであって筆ではない。なお、本編に登場する人物や組織・施設など全てが虚構であることを改めて念押ししたい〕


 ――すべて虚構である。


  筒井康隆著『創作の極意と掟』に学びしが吾が短編に進歩見られず(医師脳)


  老醜も「老いの美学」と言ひたるは筒井康隆。筆力鼎(かなへ)を扛(あ)ぐ


  「虚構だ」とあへて断る掌編もいづれは老いの愚痴と言はれむ



◇参考文献

 『創作の極意と掟』

   筒井康隆(講談社文庫)

 『老人の美学』

   筒井康隆(新潮新書)

 『筒井康隆入門』

   佐々木敦(星海社新書)

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