禍中の青春を

めんずらー

禍中の青春を

「おーい、なんでいるんだよお!」

「こっちのセリフだわ!」


これが私たち親友のいつもの挨拶だ。

知らない人が見ればトゲのある言葉。

ただ"友達"の枠を超えた"親友"という関係は愛のある言葉にさせる。

本当に心の通じる相手とは、言葉の種類なんて関係ない。


「また休校にならないかね。授業中も内職するだけなんだからさ。別に授業無くて良くない?」

「それな?教師が悪いって。絶対全員思ってるんだから多数決取ろうぜ。」


心を許しているため、女子同士だけどいくらでも悪い言葉が出てくる。

それが楽しい。


コロナの影響で行動は制限されて、行事は無くなっていった。

中学から高校にあがってみると、知らない子と1から仲良くしなきゃならない。

そんな中での分散登校は大変だった。

ソーシャルディスタンスで心も体も近づけない。


正直大変であまり楽しいとは思わなかった。

でも親友はずっと変わらずにいてくれて楽しかった。


「なんかさ、うちの高校って女子校だから男子に飢えすぎててすごいんだよね。もうインスタでDMしまくってる。なりすまして釣ろうかな。」

「いやなんでだよ。積極的だねえ。そこまでして彼氏欲しいかね。理解しがたい。」


ここまではまだまだ優しい表現だが、本当はもっと酷い言葉が飛び交っている。

そこまで関係値が深くないと話せないような女子同士の下的な話だって何も気にせず話せてしまう。

さすがに大声過ぎて周りに聞こえていることもあったので、あわてて止めたりもした。


「ちょっとさ。腹減ったからたこ焼き食べよ。」

「ああ、別にいいよ。え、でも電車の時間あるしゆっくり食べられなくない?」

「あーまあ歩きながら食べれば間に合うよ!夕飯食べられなくなるから半々にしよ。」


コロナの話をした後にはちょっと許せない話かもしれないが、私にとっては数少ない青春だった。

少しというかかなり強引なその親友は、あまり提案をしない私にとって刺激的な毎日を送らせてくれる。


「大学行ったらさ。家行っていい?」

「まあ、来てもいいけど絶対住み着くでしょ。それだけはやめてよ。」

「それはめちゃくちゃ想像できる。ていうか全然やる気出ない。でも東京行くんでしょ?なら私も頑張る。」

「なにそれ。最初から頑張ってよ。」


涙が出そうだった。

でも絶対出したくなかった。

恥ずかしいことをしたら一生イジられる。

こいつはいつも倫理観の無いようなことや暴言を浴びせてきたりするけど、いきなり嬉しいことを言ってくるからずるい。


小学校からなんやかんやあってここまで一緒にいたけど、こんな何でも言い合える中でもやっぱり言えない言葉が私にはある。


「いつもありがとう。」

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