第11話 水族館とさいご
ついに日曜日となった。ライトとカナデは朝8時から電車に乗り、昼前ごろに水族館にたどり着いた。ライトとカナデ初の"お出かけ"だった。
「残念なことに久しぶりですね」
「なんで残念とか言うんだよ」
「元カレと昔来たデートスポットにまた二人で来るなんて、正気の沙汰じゃないです」
「それはごめん」
ライトは限りなく気まずい気持ちになった。自分で誘っておいて。
水族館は巨大で、いろんなエリアに分けられた階層に、膨大な量の海の生き物や植物が展示されている。
「2回目ながらすごいですね」
「もう2回目って言わないでくれよ」
ライトは誘う場所をミスったと思った。そして、前のデートと同じ場所に行け、と言った某女性を恨んだ。
「チンアナゴって、見た目も名前も卑猥ですよね」
水族館2階のエスカレーターをあがったところにあったチンアナゴの水槽にむけて、カナデはそう言い放った。
「なんでそんなこと言うんだよ」
「だって事実ですよね。ちなみに水の中か土の中、どっちが中なんですかね」
「そんなことどっちでもいいだろ……」
「付き合っている時は土が中だと」
「言わないでくれ、黒歴史すぎる」
ライトは実際にそんなことを言っていた。
「あのさ……また俺たち付き合えないかな」
「冗談きついですよ、ご主人様」
「本気だ! また好きになった!」
「私はあんなにひどい振り方をして、金まで払わせました。あなたなんて財布同然です」
「ほんとは思ってないだろそれ」
カナデの目からは涙が出ていた。
「嫌です! 私はご主人様のエロ奴隷です!」
「おっきい声で言うな!」
「どうしても……エロ奴隷でいたいんです。ご主人様と一緒にいたいです。でも……まだ付き合えません」
「そうか……でも一緒にいてくれるんだな。これからも……一緒にいてほしい」
カナデは頷いた。
ここまでがプロローグ。いつかこの2人が付き合うのはまだ先の話だ。
ひどい別れ方をした元カノがホームレスになってたからメイドとして雇ってみた 蛇乃木乱麻 @neekoo
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