この小説は、エステルという少女とセキという少年の二人の視点で、物語が進んでいきます。
特別秀でた強さを持っていないエステルと相棒ルリーテの旅はドキドキに満ち溢れ、反対にセキとトカゲ……のカグツチの旅は、その強さにワクワクしつつも、それ故の孤独を和らげていくものとなっています。
描かれる魔法や用語は独特であり、まだ完結していないので僕の憶測に過ぎませんが、おそらくは意味や由来なく付けられた名称は1つもないでしょう。たくさんの伏線が張り巡らされているのだろうと、読んでいてひしひしと感じます。
作者様も仰られていますが、1話1話の文字数が若干多いと感じる方もおられるかもしれませんが、それは逆に読み応えがあるということです。作者様の熱量も伝わってきますので。
できれば何もない休日、ゆっくりと読み耽って頂きたい壮大なファンタジー小説です。
主人公たちが、一から築き上げ、少しずつ成り上がっていく冒険者の物語。
文章自体が読みやすく、また独自の世界観を構築するに当たって、ルビと単語のひと組み合わせで分かり易く表現されています。
どういう魔法か、単語だけで読んでそれとなく分かり、そして読み方で雰囲気を盛り上げる工夫があるんですね。
才能はあってもチートと呼べるものはなく、それが好ましく思える人には、主人公たちに愛着を持ち、そして見守っていきたいと思える事でしょう。
多くの難敵に対し、どう対処するのかも見ものです。
そして各キャラクターが持つ目標に向かって、ひたむきに努力しようと思う姿勢には、応援したくなる魅力があります。
流行りの転生ものに食傷気味であったら、是非読んでみて欲しい一作です。
第一に感じるのが、作品と読者に対する作者様の真摯さです。
改行、余白のバランス、ルビのつけ方など、ページ全体の美しさに気を遣われているのがわかります。
文章ももちろん読みやすく、設定がしっかりしているので安心して読み進められます。
異世界ファンタジーなので世界観の説明は多いですが、一度にまとめて書いてしまって読者を退屈させるようなことはありません。愛らしいキャラクター同士の会話を挟んで小出しにすることで、読者をすんなり世界観に引き込むことに成功しています。
また展開も先を急いであらすじ的になってしまうことなく、読者と一緒に一歩一歩進んでいく感じです。
昨今多いカジュアルな異世界ファンタジーではなく、昔図書室で読んだ児童書のような、作品自体に穏やかな雰囲気を備えたファンタジーです。
美しい。