第7話意趣返し
愛しいマルガリータ、貴方の心を蝕むものはなんだ。泣かないで、愛しい君。
俺はそのために悪鬼になると決めたのだ。
…
王宮に呼び出された馬鹿親子の娘・ジェシカは何を思ったか、ヴェレーノに飛びつこうとした。
「ねぇねぇ、侯爵様。お姉様より私の方に乗り換えてくれるんでしょう?」
どうやらこの馬鹿女はヴェレーノが自分に求婚するために呼び出したと思っているようだ、随分とめでたい頭をしているようだ。
「お前のような娼婦にも劣る下品な女はお断りだ、」
「な、お姉様の方が娼婦の血筋の女だって言ってたもん。」
「それはお前だと言ったはずだが」
ヴェレーノの問いにジェシカは自信満々に答えた。
「お母様が侯爵様と伯爵様が嘘を言ってると言ってたもの。」
「辺境伯まで愚弄するか、彼の方のお陰でこの国が回ってることも知らないのか。馬鹿女、」
「叔父上。もう無駄だよぉ、刑を言い渡そう。」
ミカロスの言葉にヴェレーノは頷いた、いつまでも押し問答しても無駄な時間を浪費するだけだ。
「オデッセイ公爵、公爵夫人、そしてジェシカ嬢、3名を不敬罪とする。お前たちは、国王即位を祝う夜会でベレト侯爵夫人・マルガリータ殿を侮辱し、祝いの場を台無しにした。」
「そ、それだけでっ?!それならお姉様や伯爵様だってそうじゃない、」
「お前は本当に馬鹿だな、国王に挨拶もせず騒ぎばかり起こしたことが罪だと言っているのがわからないか?」
「ぼかぁ、気にしないけど。王家の伝統だしねぇ、即位した王への挨拶そして夜会では王家の血筋とその伴侶への罵倒は固く禁じられてる。もし違反すれば死刑だ。」
ミカロス王の冷たい声でジェシカはようやく自分が何をしでかしたのか理解したようだ、即位した王への挨拶を怠り婚約者のいる男にちょっかいを出し、その果てには前王の弟であるヴェレーノにまで手を出そうとし、その上姉を侮辱した。
「だが、我が妻より温情の言葉を承った。慰謝料を請求する、65億ドライトを要求する。」
その額を聞いて夫妻は青ざめた、そんな金額は一生働いても返せない額だ。
「そ、そんな無茶です。」
「無茶?」
ヴェレーノは親子に聞き返す。
「それはおかしな話だ、ソレイユの母の遺品とマルガリータの母の遺品、そしてマルガリータを娼館に売り飛ばしたときに得た金の総額だが?なぜ払えない、」
「そうだよ、本来なら処刑になるところをソレイユとマルガリータの思い出の品、そしてマルガリータ自身を売った金で許してあげると言ってるんだ。感謝してほしいな」
ヴェレーノは小瓶を差し出し微笑んだ、「嫌ならば投薬実験のマウスになるか?」と到底払えない金の額に親子は飛びついた。
そして、何があっても文句は言わないと契約書にサインをして。
「叔父上も人が悪いな、あれ。この間できた新薬でしょう?」
「マウスで実験も可哀想なんでな、どうせなら死刑囚で試すのがいいだろう。命の有効活用というやつだ。」
ヴェレーノは凶悪な微笑みを浮かべた。
マルガリータに害をなした時点であいつらに未来などない、だが王家主催、それも即位を祝う場であんな騒ぎを起こしてくれたお陰で口実ができた。
三日後、新薬の副作用で馬鹿親子は死ぬことはなくとも髪が抜け落ち、肌が荒れ、歯が全て抜け落ちた。
悲鳴が聞こえたが、まだ実験は続けねばならない、なぜなら契約書には「死ぬまで実験に協力する」と書いてあるから。
華、毒の泉に溺れる 虹渡るカピバラ @kapibara5
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