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「だって、ジブン。駒みたいに使われるのがなんか嫌になって……文句言えば叩かれるし、頭に来て本来なら戦闘でしか使わない技をぶちまけたから」
平然と話しつつ思い出したか。毒煙が込み上げ、慌ててティルが「ウェントゥス」と風を起こし打ち消す。
「ジブンは兵器。だから、ヒト嫌い……」
ボソボソとヴェノムは寂しそうに呟く。
「なぁ、ヴェノム。少し昔話しようか」
ヴェノムの悲しそうな目に俺はもう少し仲良く慣れたら話そうと思っていたことを話す。
俺は俺だが体が別人であること。
元ドラゴンキラーだが今は借金まみれなことも。
「あのダークエルフに此方もやられててな。だから、少しは信用してほしい。すぐには出来ないだろうけど同じ被害者として」
俺はやや嫌そうに話すも包み隠さず話したせいかヴェノムは驚いた顔をしており、ギュッと俺の手を握っては薄く笑う。
「うぉぉっ!! ちょ、ブラッティが溶ける!!」
慌てて離そうとするグランだがヴェノムの手は人の温もりを感じないほど冷えており、俺の体温も伝わってないのか「暖かいね」とも言わない。だが、共感してくれたことが何よりも嬉しかったのか。ベタつくことも溶けることも一切なかった。
ヴェノムが【人として認めてくれる人の存在】が欲しかったのだろう。見た目は好青年だが上下に握手するようにする仕草はなんとも可愛い。
「ジブン、戦術はターゲット得るの得意。でも、脆いからタンク苦手だけど毒まみれのときなら無効だからタンク出来る!!」
先程とは少し違い【自分はこう動く、これが出来る、これ得意!!】と言い切る姿に「魔法は使えるのか?」と気になったことを聞くと「バトルフィールドを猛毒化」の言葉にディルとグランが一斉に「それはダメだろ(です)」と口を揃える。
「ですが、フィールド魔法となれば……コントロール次第では敵を常に陥れることも可能なのでは? ヴェノムさん、もしかしてですが一人で動いていた理由はそれですか?」
ディルは興味深そうに話に割り込むとコクコクと頷くヴェノムに「やはりそうなんですね」と腕を組む。
「そうなると、ヴェノムさんの強みを殺してしまいますね」
どうしても強みを活かすのなら、と考え込むディル。俺もさりげなく考えるとその様子にヴェノムがグランを突っつきながら「ジブン、欲しいスキルある。でも、なんか依頼人が意地悪で受けさせてくれない。子供だからとか見た目判断してくる大人のクズ」と突然攻撃性ある言葉。
「ふむふむ。つまり、ヴェノムはその依頼を受けてスキルを得ればオレたちとも戦いやすくなるってこと?」
適当に話しているのか。ただの話の流れか。珍しくグランが話を進めるとコクコクと頷くヴェノム。
「報酬がフィールド魔法系のスキルで【特定の相手のみにフィールドを展開】するやつだから欲しい。ただし、相手はネクロマンサー。アンデットを操るモンスター」
「珍しいな。ドラゴンじゃなくてネクロマンサーとなると上位……。ネクロマンサーは自身の姿を隠しアンデットを解き放ちながら戦う。持久戦になる」
俺はやや考え込むように右上を見ては「もしかしたら、その依頼主は一人での討伐を許可してなかったのかもな。だから、子供扱いした可能性もある。だが、今の状態なら可能性はあるかもしれない」と瓦礫に腰掛け、城塞に目を向ける。
「まぁ、運試しで行ってみるか? ネクロマンサー討伐に」
俺が溜息混じり言うと「ま、マジで……」とグラン。ディルはドラゴンキラーの経験からか怖くもなく淡々と「現状は厳しいかと思いますが倒せるのなら倒して一部借金返済などに使えればなと。それに、もしかしたらヴェノムさんの戦い方を間近で見られるんです。いい機会だと思いますよ」と自信に満ちた声。
「ジブン、回復・アイテム使えないし所持も出来ない。だから……負担すごい……それでもいいなら。ボロボロになっても仲間守る……」
「ヴェノム、キツかったら俺達が合わせる。だから遠慮なく言ってくれ。じゃあ、さっさと寝て朝は城塞で軽く戦って夜に行こう。分かったな」
ドラゴンキラーの俺が体を乗っ取られやり直し!?スキル0、借金まみれの人生録。 無名乃(活動停止) @yagen-h
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