23
冷たい扱いに「んんーオマエ、オレのポジ取るな!!」とグランはヴェノムを指差す。
「え、あの……その……ジブンは」
突然、指差され驚くヴェノムは怖くなったか。モワッと怪しげな煙を薄っすら纏う。
「あぁー!! グランくん、刺激してはダメです」
見兼ねたディルが仲裁に入るも手遅れで――「うわぁぁぁっ」と泣き出すヴェノムの足元から毒が湧き出す。
それは、大地の命を喰らい。
空気までも汚染する。
軽く吸い込んだだけで喉を痛め、締め付け、空気を通させない――と言わんばかりの苦しさ。いや、簡単に言えば殺しに来てる。
「ゲホッゲホッ……グラン、その子に謝れ!!」
掠れる声。
絞り出せるのは今にも消えそうな声――。
「た、タンマ。悪かったって!!」
グランも噎せながら必死に謝るとグスグスしながらなんとか泣き止む。
「見た目は男ですが中身は女の子なので優しくしてあげましょ。毒に殺されなくはないので……」
俺もそれには同感で頷く。
「何かコントロールする術があると助かるんだか……ディル何か持ってないか?」
「残念ながらありませんね。それにアイテムや私の魔法をかけたとしても効果を得られるとは思いません。あのダークエルフの仕業とならば余計に」
俺とディルは顔を合わせ「やれやれ」と肩を落とすもグランはヴェノムに興味を持ったのか「武器あんの?」と優しく声かける。
「ううん、ない……溶かしちゃうから」
「防具もない感じ?」
「うん、溶けちゃうし」
グランの問いかけに全て『溶ける』で答えるヴェノム。流石に話が広がらず静寂が訪れるも「でも、不死身だから死なない……滅多に」の言葉に「おぉ!! なんかアタッカー増えた気がしてスゴく嬉しい!!」とグランは拍手。
「アイツら仲良くなってる……よな?」
「一応……なってはいますね。彼女の地雷を踏まなければ、の話ですが」
俺とディルをよそに盛り上がる二人の会話。それを聞いて分かったことが少し。
「なぁ、ブラッティ。ヴェノム、丸腰ってことは結構接近な感じなんかな。オレ、戦術気になるんだけど」
突然話を振られ「あぁ、確かに。ステータス見せてくれたときもガッツリした武器なかったし。まぁ、服に関してはそれなりに調合や合成で頑張ったんだとしたら初期服かな」と大まかな予想を言うとコクコクとヴェノムが頷く。
「あら、少し慣れてきましたからね。ヴェノムさんは普段どんな戦い方とご依頼を受けてますか?」
ディルがグランとブラッティの代わりに丁寧に聞くと「普段は同行者なしのドラゴン関係の高難易度関係。いつも戦うときは回復いらないから毒化しつつ溶けたり、液体になって戦ってる。上手く行けば毒を固形にして武器に変化させたりしてるから……えっと……」と予想を超える内容に俺、グラン、ディルは固まる。
「へ? オマエ……もしかして、ドラゴンキラー?」
遠慮気味にグランが言うと「非公認の……飼われてるだけの感じだけど……でも、溶かしたから無効かな」の言葉に「エェェェェ!!」と不思議と口を揃え声を上げると嬉しそうにヴェノムがクスクス笑った。
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