【短編】召喚した勇者を洗脳して魔王軍に特攻させるだけの簡単なお仕事
イモタロー
聖女のお仕事
聖女の館へ向かう道すがら、同僚のフローラを見かけたので声をかけた。
「フローラ、おはよっ」
「ビアンカ! ねぇ、聞いてよ〜」
「え、なになに?」
フローラは普段おとなしい子なんだけど、今日は朝からテンションが高かった。
「今の勇者なんだけどさ、今日でやーっと出荷できるさっ」
「え〜、おめでとう! 結構かかったよね。何日目?」
「32」
「ヤバ。え、バカなのひいちゃったの?」
「そうなの。超バカなくせに性欲はつよいサルみたいなヤツ。もう最悪ー」
「運悪かったね、かわいそう。仕事終わり打ち上げしよ? 奢るから」
「いいわね。6時に館の入口で待ってるから」
「オッケー! いっぱいグチ聞いてあげる」
私たちの勤務先、聖女の館に着いた。フローラとは担当部署がちがうのでバイバイと手を振って別れる。彼女の部署は地下2階、私は3階だ。私は階段を登りながら頭を仕事モードに切り替えていく。
私たちは聖女として勇者を召喚し、言葉を教えて洗脳の魔法をかけ、魔王軍との戦争の最前線に出荷する仕事をしている。
この実情を知っているのはアインツハルト王国でも少ない。20名しかいない選ばれし聖女を除けば、騎士団と王族くらいしか知らないんじゃないかな。
非人道的、だとは思う。教会に知られれば聖女たちは処刑されてしまうかも知れない。わかっている。わかっているのだ。
それでも、強力な兵器である勇者の納品は全てに優先される。毎日1人は納品しなければ戦線が崩壊してしまう。崩壊してしまうのだ。
私が召喚した勇者が入っている檻の前に着いた。中を見る。昨日と様子は変わらない。
彼は毛深い男だった。全身毛むくじゃらな大男だった。2メートル以上あるんじゃないかな。
本当に大きい。こぶしが私の頭ほどある。全身の筋肉は極端に発達しており、その内にものすごいパワーを秘めているのが外見からも明らかだった。
「ウホッ。ウホウーホッ!」
召喚はランダムだ。ランダムなのだ。例え召喚したのが性欲のつよいサルみたいな男だろうが、ホンモノのゴリラだろうが構ってはいられない。出荷する。出荷するのだ。
「あたし、びあんか。び、あ、ん、か」
「ウホッ!」
「おぼえまちたか〜?」
「ウホウーホ! ウホホッ!」
「そうでちゅか〜」
ゴリラだろうが赤んぼうだろうが、関係ない。言葉を教えて洗脳し、魔王戦線に出荷する。ノルマがある。ノルマがあるのだ。
「ウホ?」
私たち聖女の仕事は、勇者を召喚し、言葉を教えて洗脳の魔法をかけ、魔王軍との戦争の最前線に出荷することである。
……このゴリラ勇者を召喚し、言葉を教えはじめて今日で100日目。
「いや、ムリでしょ」
「ウホッ!」
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思ったのと違ったという読者様へ向けて、召喚された勇者が聖女に洗脳される話を書いております。ご査収ください。
洗脳聖女とウソつき勇者〜勇者として異世界召喚された俺は洗脳してくる聖女が相手でもチートで二股かけるぜ!〜
【短編】召喚した勇者を洗脳して魔王軍に特攻させるだけの簡単なお仕事 イモタロー @onikutabetai
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