血を飲むことができない吸血鬼

 人間社会に紛れて生活する、自分のもの以外の血を飲めない吸血鬼の物語。

 学園ものの現代ファンタジーです。
 人の血を飲まず、鉄剤の摂取と自分の血を吸うことで誤魔化しながら生きる吸血鬼。
 当然(少なくとも吸血鬼としては)かなり衰弱しており、しかしそこをバンパイアハンターに見つかってしまい……という筋のお話。

 そのバンパイアハンター自身もダンピール(吸血鬼と人の間に生まれた者)だったりして、その抱えた宿命が魅力の作品です。
 彼らの間に否応なく存在する因縁と、しかしそれを超えて成立する友情、ひいては恋や愛などがとても印象的。

 学校を舞台としていることもあり、学園ものとしての味わいがあるのもよかったです。
 いや、肝心の主人公が年齢不詳だったりもするのですけれど、でも青春らしい雰囲気がとても素敵。

 いろいろ悲劇的な運命を抱えてはいても、しかし優しい物語であるところが大好きな作品でした。