処刑台での最後のパフォーマンス

 世界を救った英雄から一転、反逆者として追われる身になった元勇者。
 その唯一の仲間たる道化師の、最後の告解、あるいは弁明の物語。

 道化師が主人公の異世界ファンタジーです。
 処刑台の上での最後のパフォーマンス。話しぶりはあくまでおどけた様子ながらも、しかし聴衆の前で堂々と何らかの真実を暴露する、その逆転あるいは復讐がスカッと痛快なお話。

 完全に主人公ひとりの口上のみで書かれており、朗読台本としての徹底ぶりがすごい。
 本当にそのまま読み上げることで、作中の状況をそっくり再現できてしまいます。

 語られている内容、というか、そこにある物語もとても濃厚なのがまた素敵。
 特に道化師さんと勇者さんの関係性。ネタバレになるため多くは語りませんが、グッとくる強い絆のようなものがしっかり詰まっています。

 処刑台の上での演説、という一見残酷にも見える形式ながら(あるいは、なればこそ)、まっすぐなドラマを見せてくれる物語でした。