壁になりたいと言うのは簡単だけれど

 とても仲のいい幼なじみの男子三人組の、日常と友情の物語。

 どうしてもネタバレになってしまいますので、未読の方はこの先ご注意ください。



〈 以下ネタバレ注意! 〉

 果たして三人組なのか二人組なのか、いたはずの「アイツ」が急に消えて戸惑うふたりの物語です。

 タイトルや作中での言及からして、きっと(何か不思議な力で)本当に壁になってしまった、と解釈できるのですけれど。
 だとすると、もうどうやったってギャグにしかならないであろうその状況を、しかしどこまでも大真面目な友情物語として描いたお話です。

 こういうの本当に大好き。
 予想外の方向から飛んでくるでっかいシリアスの塊で、思い切り頭をぶん殴られることの心地よさ。

 実は正解はどこにも明示されていないため、実際には解釈のしようがいくらでもある、というのも素敵なところ。
 例えば彼らふたりの共同幻想(=初めから「アイツ」はいない)と読んでしまうことも可能なのですけれど、しかしいずれの読み方をしたところで、彼らの中のドラマそのものは変わらないところがとても好きです。

 どうあれそこにある友情や、それを失くして悔やんだり怯えたりする、その気持ちやそのものは変わらないこと。
 彼らの行動や考えから垣間見える、誠実さや優しさのようなものが気持ちのいい作品でした。