怪物に蹂躙される弱く小さな命

 ひとりの強力な魔法使いと、ごく普通の人間だけで構成された部隊との、命懸けの戦いの物語。

 この世ならざる圧倒的な力を備えた存在を、現実世界の物理法則とスペックで生きる人間だけでどうにかしようとする、ちょっと変わり種の異世界ファンタジーです。

 思考実験のよう、と言っては大袈裟というか少し印象が違うのですけれど、でも本来はかち合わないもの同士を戦わせる、何か「夢の対決」にも似た読み味が楽しい作品。
 もうぐいぐい引き込まれました。面白かった……!

 常人側の視点から描かれた物語なのですけれど、それをわかりやすく俯瞰で(言うなれば将官・軍師目線で)描くのではなく、〝多勢の中の個人の主観〟を通じて描いているのがもう本当にすごい。

 いつ敵とかち合い戦闘になったかも定かでなく、何が起こっているのかも把握できないままの、半ば混乱状態にある戦闘の描写。
 この迫力と臨場感、なにより絶望感のようなものが、読んでいてひたすら気持ちよかったです。
 敵の強さと怖さ、生還の目の薄さが文章越しにビリビリ伝わってくる……!

 本当にタイトルとキャッチコピー通りのお話なのですけれど、想像以上の威力でガツンとぶん殴ってくれるのが大変嬉しい作品でした。
 とっても面白かったです! おすすめ!