壊れかかった(あるいはもうとっくに壊れていた)心

 日々のストレスでいろいろ限界な『チカ』さんと、彼女に自死をすすめる『俺』の物語。

 ふたりの対話の形式で進む、現代もののお話です。
 何がすごいってもうチカさんの参りっぷりの描写が!
 もっと具体的に言うのなら、その愚痴の生々しさと、そこから伝わるイライラ感の迫力がもう途轍もないです。

 読んでいてこっちの胃まで削られるようなねっとり感。
 言葉や態度の節々がいちいちささくれ立ってしまう感じとか、また指のささくれ(物理)をやたらと剥きまくる様子とか。
 この辺、もう見ていて本当に「うわああ」ってなりました。すごい臨場感……。

 物語外にいるはずの自分にまで波及してくるほどの強烈なストレス。
 ここまでの生々しい手触りはなかなかないという意味で、ある種白眉と言っていいと思います。

 内容そのものは本当にふたりの問答のみで進んでいくため、ここではあえて触れません。ネタバレになってしまうので。

 ある種のグロテスクさというか、ずしりと胃に残る〝厭〟の表現が光るお話でした。