第54話:決闘後のお話
【決闘の勝者が決まりました。 プレイヤー名:セツラ WIN】
耳に届くアナウンス。
それが聞こえた頃に展開されていたフィールドが消え、俺にかなりの経験値が入ってくる。それでレベルが三つ上がり、俺のレベルは75へ。
確かそのレベルは二段階目の上限だと記憶しているが、これまた後でキャップ開放のクエストに行かないと行けない感じだろうか?
そんな事を思いいつつ俺はセタンタに近付いて手を差し伸べる。
「あー負けた負けた。楽しかったぜセツラ!」
俺の手を取り立ち上がりにかっと笑うセタンタ。
少しよろめく彼を支えながらも見ていたエルフの女性とナユタに視線をやればそこには驚く彼女と得意げな顔をする幼馴染みがいる。
「まさかセタンタが負けるとはな。それに貴様はその御霊を扱えるのだろう……そういう訳でお前達、今の決闘は見ていただろう?」
その瞬間に今まで感じていた視線が引く。
戦闘中も見届けるような感覚のそれを感じていたが、こうも一気に消えるとそれもそれで違和感が……。
「それなら貴様も巫女殿と一緒に私の家に案内しよう。構わないか?」
「ああ大丈夫だ。禍津も良いか?」
『構わぬ……それにそこの海魚に勝てたからな! 今は気分が良いのだ!』
「チッくそが……」
さっき出会ったばかりなのにこんなに仲が悪いと後が心配だが、喧嘩するような雰囲気でもないし少し意識するぐらいで良いだろう。
そんなわけで俺とナユタを含めた二人のパーティーはエルフの女性であるエウェルさんの後に続いて彼女の家に入ることになった。
「それで早速だが、巫女殿の力を見せてくれないか?」
「ん、さっき頼まれたしね。とりあえずスキル使ってみる」
そう言いながらもナユタは怨骸のドラウグのクエスト報酬で手に入れた『汚染された枝葉』を取り出した。
それは紫に変色した禍々しい一本の枝葉。
それにナユタの奴が何やらスキルを使ったようでそれは瞬く間に色を取り戻した。
「本当に浄化できるのだな……助かる巫女殿」
「ん――だけどまだ数あるんでしょ? あと六回分は出来るけど、それ以上はポーションないとキツいかも」
「いや浄化できるだけも助かる。私達では無理だったからな。セタンタも巫女殿を見つけてくれた助かった」
「偶然だけどな、それで説明しないのか? ここまでやって貰ったんだ話した方がいいだろ?」
「そうだな――とりあえず何が起こっているのか話そう」
話を聞けば、どうやら近頃森の木々が不自然に枯れるという現象が起こっているらしい。そしてこの森で現れるモンスターも凶暴化しており、稀にだがさっき浄化された『汚染された枝葉』を落とすようになったとか。
その異変の時期は少し前からのようで一週間前程からだそうだ。
この森の住人であるエルフからすると放っておけない問題らしく、戦闘が得意なセタンタが調査していたとのことらしい。
「そしたらセツラ達に出会ってな、まじで浄化できるとは思ってなくて助かった。あ、そういえばなんだが旅人ってこの世界のモノの詳細が分かるんだろ? 何か分からないか?」
「ん――ちょっと待ってね見てみる」
そう言ってナユタの奴がインベントリを開いてアイテムの説明文を見ている間少し待つ。長いテキストなのか四十秒ほど彼女は熟読しその口を開いた。
「えっと、これ世界樹の葉っぱなんだって――名前も『浄化された枝葉』になってる。使い道は分からない」
「なに世界樹のだと?」
「うん」
「そうか――やはり世界樹に異変が起こっているんだな。とりあえず助かった。報酬を渡そう」
ナユタの言葉を聞いて何か思い当たる節があるのか、そんな言葉を零す彼女。それから何やらアナウンスが届きクエストが進んだ。
【エピッククエスト:エルフとの邂逅をクリアしました。
該当プレイヤーに報酬が支払われます】
それから渡されるのかなりの量のガル……つまりはこの世界の通貨と回復アイテムの素材である薬草が渡された。
「近頃森に旅人達が足を踏み入れるという事を神託で教えられていたが、最初に出会ったのが巫女殿達でよかった。今日は異変を調査するために一度解散したいのだが、また今度来てくれないだろうか? 仕事を頼みたい」
【エピッククエスト:世界樹の森の異変が解放されました。推奨レベル120
受注しますか? ・はい いいえ】
多分だがナユタの方にもこのクエスト受注画面はいっているだろう。
すぐに受けるとどうなるか分からないが、とりあえず保留というわけにもいかない。それに何か異変が起こっているのなら気になるし俺は受けても良いと思う。
(どうするセツラ? 私は受けても良いけど)
(俺も構わないが、これ絶対に難しいよな)
(まあそう、それにどのぐらいの長さか分からないし。誰かに相談したくはあるかも)
(あーそれなら任せろ。とりあえず複数人で受けれるか聞いて見る)
ナユタからのテレパシーに答えながらも俺はとりあえずある事を聞いてみることにした。
「えっとエウェルさん、受けるのはいいんだけど……友人も誘って良いか? 俺達だけじゃ少し不安でさ」
「構わないぞ、セタンタに勝てるほどの者の友人なら他のモノも認めるだろう」
「なら助かる。じゃあ今は解散でまた今度……でいいんだよな?」
「ああ、それと二人にはこの道具を渡しておく。これがあればセタンタの案内がなくともこの里に辿り着けるだろう」
【エピックアイテム『森誘いのオカリナ』が手渡されました】
俺達に渡されたのは二つのオカリナ。
俺のは黒いオカリナでナユタのは白く対称的なモノだった。
効果はさっき言われたとおりこの里への道を開くというものらしく、これがないといくら探そうともこの里には辿り着けないらしい。
「とりあえず今回は俺が外まで案内するぞ」
そうして、俺達はセタンタに案内され森から出て行くことになった。
そして森から出てユキとログアウトする直前、俺は忘れないうちにフレンドの一人にメッセージを飛ばしてその日のエタファンを終了した。
〈Eternity Fantasia〉~配信者、神ゲーをエンジョイしてたらいつの間にか魔王と呼ばれてた件~ 鬼怒藍落 @tawasigurimu
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