第53話:エルフの里での決闘

 セタンタの誘いに乗ることにした俺とナユタは彼に着いていくことにした。

 少し険しい道を進み、辿り着いたのは森の中の村……いや、事前情報的に里だろうか? とにかく小さな家が集まってる集落みたいな場所に俺達は案内された。

 かなり神秘的な場所で、マジで古いファンタジーの舞台のような場所に感動してしまう。

 

「お前等ー帰ったぞ」


 そしてセタンタが声をかけると、先程まで誰もいなかった場所にエルフの女性が現れる。警戒しているのか此方を睨んでおり特に禍津と銀珠の方に視線を送っている。

 それどころか周りから色んな視線を感じるし……なんというか居心地が悪い。

 

「おいセタンタ、またオマエは厄介な者達を連れてきたな……」

「ははっ、まぁいいだろエウェル」

「まったくオマエは……それよりだ何故人間を、それも旅人を連れてきたんだ?」


 呆れたようなその声音だが。それに笑いながら言葉を返したセタンタに対する反応で二人の仲の良さが覗えた。


「ん、そうだ。この二人が汚染された枝葉を手に入れたらしいんだよ。かなりの数倒してたまにしか手に入らなかったアレをだ。しかも聞くところによれば浄化もできるっぽいぞ?」

「……なに? 貴様等それは本当か?」

「うん、浄化は出来ると思う。そういうスキル持ってるし……私巫女だし」


 ……完全に置いてけぼりだが、俺は浄化とか出来ないしここはナユタに任せるのがいいだろう。


「その力を借りたいのだが、頼めるか?」

「詳しいことを教えてくれるならいいよ」

「……そうだな、頼む以上伝えた方がいいが……そっちの男は信用ならん。セタンタのクリード以上の御霊など危険すぎる」

『妾的には敵意がないし害するつもりもないのだが……』

「……そのような歪な気配を放っているのにか?」

『そう言われても困るのだ妾は普通にしてるだけだぞ』


 最近思うようになったのだが、NPCは禍津を警戒する人が多いよな。

 ……最初は俺もやべぇ奴と思っていたが、実際接してみるとかなり良い奴ではあるし、なんだかんだで俺の相棒だし悪く言われるのは少し嫌だ。


「なぁエウェル、セツラの御霊が危険なのが悪いんだよな?」

「そうだな、どれほどの脅威になるか分からないからな」

「ならこいつらの実力が分かればいいわけだ――なぁセツラ、戦おうぜ?」


【セタンタから決闘が申し込まれました。

                   彼と戦いますか? ・はい いいえ】


 響くシステム通知、彼の意図は大体は分かるがあまりも急すぎる気がする。

 大方、俺の実力を周りに示すために挑んできたんだろう。

 セタンタの立場は分からないけど、道中の様子を見る限り良い奴ではあるだろうし、これは多分善意から来る行動の筈だ。 

 なら断る理由も無いし、俺は『はい』という選択肢を選んだ。


「了解――戦うぞセタンタ」

「そう来なくっちゃな! てなわけでだ離れてろ二人とも、今から戦うからさ」


 セタンタと俺の中心に何か結界のようなモノが張られる。

 そういえば最近のアップデートで決闘システムが実装されたようだが、これがそうなのだろう。

 詳細はというと、HPが1割になると強制的に戦闘が終わるフィールドが作られるような感じで、どんな事があっても決闘中は1割以下にはならないようだ。

 

「じゃあ、早速やろうぜセツラ。いくぞグリード!」

「……まぁいいぞ、オレ様もその二人の力は知りたかったからな!」


 といわけで決闘する事になったので俺は禍津を装備して刀を構えた。

 NPC戦はハーデスを加えると二度目になるが、流石にハーデスレベルとは思いたくない。とりあえず力を示す以上は全力でやった方がいいだろうし頑張ろう。

 

————————————

PN:セツラ

LV:72

JOB(職業):侍

HP(体力):228+12

MP(魔力):66+2

SP(スタミナポイント)97+9


STM (持久力):47

STR(筋力):90

DEX(器用):17

END(耐久力):12

AGI(敏捷):64

INT(魔知):16

TEC(技量):35

VIT(生命力):48

LUC(幸運):30

ステータスポイント:42

スキル:居合い

パッシブスキル:危機感知

        狂鬼の回術

武器装備時スキル:雷斬り

御霊:禍津童子まがつどうじ

種族:おに 武器形態:紋様・刀 

————————————


「いくぞ――グリードォ!」

「やるぞ禍津!」



 勝負が始まった瞬間、セタンタの腕が上がり――次の瞬間には紅く鋭い二メートルはあるだろう凶器が握られていた。

 俺も霹靂神はたたがみを構え攻撃を仕掛けようとしたのだが――それより前に相手が突進してきて空間を斬った。


「へぇ良い目してるな!」

 

 ――紅い旋風が迫ってくる。

 左右に避けるもリーチ的に不利、背後には展開されたフィールドがあり退路もなし。相手の動きを観察し、動きからなんとなく次の攻撃を予測する。

 そして次の判断は一瞬、セタンタの攻撃が点のモノだと分かった瞬間に――。


「避けるかすげぇな!」


 前進しながら体を沈み込ませるように屈んで刀で斬り掛かった。

 そのまま連撃――斬り上げて避けられた所で上段からの一撃、そして続けるように横に一閃。

 だけどそれは後ろに大きく跳躍される事で避けられた。

 そして生まれるのは五メートル弱の間合い、相手の持つ槍のリーチを考えるとかなり不利であろう。

 だからこそそんな状況で俺が選んだのは疾走。

 奔り迫る矛先、それを刀で流して距離を詰める。

 

「ッ――――槍ってやっぱり厄介だな!」


 これはハーデス戦で学んだことだが、槍相手はやっぱり戦いづらい。

 あいつとの戦いで覚えたが、長柄の武器常に距離を離すことに重きを置き動いてくる。つまりはセタンタに間合いを離されれば射程範囲に入らない限り撃墜されるだけになる。

 外敵である俺を待って貫くことは容易いことだからだ。

 ――なのにも関わらずセタンタは攻めてくる、俺が距離を詰めたいのを分かってるはずなのに、自ら距離を詰めて俺を削ろうと迫ってくるんだ。

 あの日以降俺は槍の戦いというのをかなり勉強してきたつもりだった。

 ハーデスに苦戦した影響で珍しく図書館に行きそこで覚えた槍兵の定石、それは長大な間合いをもって敵を制し、戦いを有利に進めること。

 だけどそんな定石はこいつには通じないようで、喉を肩を眉間を心臓を――急所を穿とうとしてくるこいつの槍には一切の隙が無く、いなすだけで精一杯。

 何よりやばいのが、俺の上がり続けるステータスに対応してくるのがヤバイ。

 だけど、それもここまでだ――八十秒が経ったところで俺は相手の癖を大体見切ることが出来た。

 急所を穿とうとしてくるセタンタの一撃を少し躱して柄を弾き、軌道を逸らせば――。


「よし一撃目だ!」


 相手に斬り掛かり、体力ゲージを二割削る。

 返しとして薙ぎ払いをされたが、上がったステータス故避ける事が出来た。


「まじでやるな! 温まってきたぞ!」

「そっちこそな、こんなに攻められないのは初めてだ!」

 

 本来なら制限時間はないこの戦闘。

 だけど一割になったら強制敗北というのが禍津との相性が悪い。

 俺の現在体力は240であることから、禍津の性能を考えれば220秒程経てば負けるのだ。だからそれまでに相手を削らないというのがかなり難易度高かった。

 だからこそ、俺は勝負に出る。

 この決闘に勝つために――少しでも無茶しなきゃ駄目だから。なにより実力を見せるのなら、本気でやらないと失礼だろう。

 幸い相手は手数が多い、それならば。

 迫る三連撃――それを俺は。


「――化物かよ!」


 弾き、返ってきたのを流していなす。

 そして俺は一瞬のうちに二連撃を叩き込んだ。


「マジかよ。今の返されるか!」

「悪いな、あんた程の槍兵相手に手加減は出来ないんだ」

「はっそうこなくっちゃな!」

 

 距離をとるセタンタ。

 お互いに体力が削られて残り四割程。だけど、俺は攻めに行く、相手の戦闘スタイル的にそれは得策じゃないからだ。


「全力だ。受けてみろ! 御霊解放【ゲイ・ボルク】!」


 距離を取られて放たれるのは槍の投擲。 

 放たれた途端に枝分かれしたその一撃は逃げ場を完全に潰すようにフィールド全体に振ってきた。

 これは不味い、残った体力を考えると負ける。

 だけどこの隙の無い攻撃を避ける手段は無く――弾けどもその隙に連撃が来る。

 ならばと俺が選んだのは。


「いくぞ禍津! 『宿業解放――八十の太刀』」


 叫べば紋が消えて俺の手の中に太刀が現れる。

 それを振るえば、迫る槍は全て斬り払われ――そのままセタンタに届き、相手の体力を削った。


[あとがき]

 お久しぶりです。

 やっと筆がのり続きが書けたので不定期ですが再開します。

 一応カクヨムコンのエンタメ総合部門に出してるのでよかったらフォローや星をお願いします。

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