交際相手と、ではなく、その親友との結婚

 交際相手から突然、「私の親友と結婚してほしい」と切り出された男性のお話。

 強烈なインパクトのある冒頭から始まる、現代もののドラマです。
 沙耶香という不思議で途轍もない女の物語。
 現代ものではあるのですけれど、どことなくSFショートショートのような読み味があって、この独特の印象がとても素敵なお話でした。

 まず冒頭、交際しているはずの、なんならそろそろ結婚をと思っていた相手から、でも「私の親友と結婚してください」とお願いされる状況がすでに楽しい。
 しかもそのままとんとん拍子に話が進んで、本当にそうなってしまうのがまたすごい。
 普通に考えたら「そんなことってある?!」という展開なのですけれど、でも主人公の語る「沙耶香」という人間の個性を知るほどに、だんだん「この人ならあるいは」という気持ちにさせられていくところがもう最高でした。

 普通ならありえないことを、でもこいつならと思わせてしまうような不思議な人。
 加えて、単純に主人公が沙耶香さんのことを好きすぎるところ(それが読んでいて伝わってくる感覚)も。

 読み味そのものに奇妙な味わいのある、不思議で楽しい物語でした。