第4話「真実を知る権利」
Side 天野 猛
「話を聞けばもう引き返せなくなります。それでも聞きたいですか?」
あれから翌日。
志郎の言葉を幾度も考えた。
その上で春歌と喫茶店で相談する事にした。
「て、これデートですよね?」
「う、うん――だけど一応真剣な話をしてるワケだし……」
「周囲から見ると何か将来の大切な話してるみたいですね」
などと二人は変な気分になりながら相談を開始した。
「まず第一にこれ以上危険な目に遭うことですよね」
「ええ」
「だけど僕は――何度も考えたけど、真実を知りたい」
「私は――その、直人君や猛さんのためもあったんですけど、同じ気持ちです」
それを聞いて猛は
「結局は同じ考えか」
と、苦笑した。
「みたいですね」
春歌も苦笑いをする。
「で、どうします? 志郎さんに伝えに行きましょうか?」
思い立ったかのように春歌が言うが――
「いや、まだ時間はある。限界ギリギリまで考えよう」
「はい――」
猛は静止した。
「まず間違いなくこれから先は厳しい戦い――昨日の戦いと同じかそれ以上の修羅場になると考えた方が良い」
「はい。それに学園を敵に回す事になりますね。最悪お尋ね者でしょうか?」
「……だけどそれが出来てるならとっくの昔にやってるはずだし……たぶんだけど天村財閥と事件の内通者の権力は拮抗している状態じゃないかな?」
「確かにそう考えれば色々と辻褄が合いますね」
猛の推理に春歌は同意した。
☆
少年と少女の二人で行動しているがデートと言う雰囲気でもなかった。
自然と加島 直人の墓参りに行っていた。
墓前の前に佇み、猛は春歌に誓う様にこう言った。
「改めて決意するよ。加島君のためだけじゃない、皆のためにも、そして自分のためにも――この事件の真相を暴いて、元凶を叩く」
「はい。私も同じ気持ちです」
「辛い事や悲しい事も起きるかもしれない。それでも進むよ……」
そしてふとそこに天村 志郎が現れた。
「志郎さん? 見張ってたんですか?」
タイミングが良すぎる事に猛はその線を疑った。
「まあそんなところです――」
悪びれなく肯定し、加島 直人の墓に花束を供える天村 志郎。
「ですが想いだけではダメです。ここから先は力も必要になります」
志郎の言葉で猛は「何か試験を?」と尋ねた。
「私が直々に相手をしましょう。春歌さんの相手は――よく知っている人です」
そう言って現れたのは青いお下げのヘアースタイルのモデル顔負けのプロポーションを持つ大人っぽい雰囲気の美少女だ。
髪には赤いヘアバンド、お下げに束ねた髪の毛には真っ赤なリボンを巻き付けている。
「舞先輩――」
「春歌ちゃん――本当はこんな事したくないんだけど――」
「いいえ……舞先輩、それぐらいしないといけないぐらいに必要な事なんですよね?」
揚羽 舞。
またの名をセイントフェアリー。
嘗て変身ヒロインとして学園で活躍していた少女だが一連のデザイアメダルの騒動で復帰したのは有名な話だ。
同時に天村 志郎とは幼馴染、(本人は腐れ縁だと言っているが……)の仲でもある。
「そうね。ヒーローごっこじゃない。命懸けの戦いの世界に踏み込むんだもの。これぐらい跳ね除けて貰わないとダメなのよね」
と、舞は自分に言い聞かせるように言った。
「じゃあ場所を変えましょうか――」
そして4人はある場所へと向かう事になった。
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