第5話「激突」
Side 天野 猛
天村財閥が所有する広い試験場。
そこで二組のペアは対峙した。
「まずは急な試験を受けてくださってありがとうございます」
そう言って志郎は軽く礼をしてこう続けた。
「正直に言うとここまでしなくて良いとは思いますが、どうしても最後の確認をしておきたかったんです。それに舞さんがどうしてもというから――」
志郎は舞に目をやる。
「志郎の言う事は本当よ。それに私の気持ちも本当――矛盾するようだけど、正直私もここまでする必要があるのかと思ってるけど――けど、これ以上を踏み入れると言うのならどうしても実力は必要になってくるわ」
そう言って舞は変身する。
デザインは春歌の変身形態に何処か似ている。
それもその筈、春歌の変身形態である桜レヴァイザーは猛のレヴァイザーだけでなく、舞のセイントフェアリーも参考にしているからだ。
羽飾りと触角が付いた青いヘルメット、型そうなリボンとセーラー服とスカート、その下に青いレオタード。
ボリューム溢れる羽を繋ぎ合わせたかのようなショルダーパーツ。
白い手袋にブーツ。
春歌の桜レヴァイザーと違い、二の腕や太ももは肌の露出がしている。
舞のモデル顔負けな完璧とも言えるプロポーションがより魅力的に引き立立てていた。
「まあそう言うワケです。覚悟してください」
そして志郎もバックルベルトを巻いて変身する。
漆黒のボディ、金色のラインが走る特撮ヒーロー、ダークヒーローと言った感じの風貌だ。
手には剣を持っている。
「春歌ちゃん」
「はい」
そして二人も変身する。
それぞれレヴァイザー、桜レヴァイザーになった。
☆
Side 城咲 春歌
動力の都合上、空中を飛べるために空中でぶつかり合う春歌と舞。
春歌は光線銃ハートデリンジャーで攻撃しながら隙を伺う。
一方で舞は胸のリボンをソードモードに変形させ、ハートデリンジャーの光弾を弾きながら果敢に接近戦を挑む。
状況的には春歌が押されていた。
「何度か模擬戦でやり合ったけど、それじゃ認められないわ」
「ならこれはどうです!!」
そして春歌は胸の出っ張りからビームを、ハートブラスターを連射した。
「出鱈目な――だけど――」
「でやあああああああああああ!!」
「ッ!」
怯んだ隙に桜色のエネルギーを身に纏った拳を舞に叩きつける。
それを咄嗟にガードする舞。
☆
Side 天野 猛
天村 志郎は身に纏ったスーツ、インぺリアスで空中に位置取り、剣をL字に折り曲げてライフルモードにして天野 猛を的確に追い立てる。
『ほらほら、どうしましたか?』
レヴァイザーは弱点として空中を跳べない。
だから空中から攻撃する。
『分かっていたけど――やり辛いね』
単純な手ではあるが、現に猛を追い詰めていた。
猛もサイクロンフォームになって、銃を握り攻め立てるが空中に飛べる、飛べないの差は目に見えて明らかだった。
『なら――こう言う手で!!』
『おや?』
何か手はあるのだろうかと志郎は首を捻る。
『なっ――』
志郎は言葉を失った。
猛は施設内を思いっきり飛び回り始めた。
サイクロンフォームの驚異的な跳躍力で壁から壁へ、壁から天井に、壁から地面に壁へと――スピードで翻弄を始めた。
『成る程、そう言う手で来ますか!! ですが――』
志郎も速度を出した。
屋内なので空を飛べると言う利点は発揮し辛いが、志郎はその不利すら感じさせない技量で猛を追いかける。
まるで戦闘機同士のドッグファイトのような状況になって来た。
『そこ!!』
そして空中で、身動きが出来ないところで光弾を発射する。
いくら素早く動けてもどうにもならない。
志郎はそう思ったが。
『はっ!』
『なっ!?』
フォームチェンジ。
水色のレヴァイザー。
三叉の矛であるトライデントを持った形態アクアフォームになり、トライデントで光弾を弾く。
そして地面に着地し、サイクロンフォームに戻って今度は志郎に突撃する。
『ミスを犯しましたね――』
ただの志郎に向っての跳躍なら簡単に回避できる。
猛もそれを分かっていたから今迄しなかった――と、そこで志郎は嫌な予感をした。
『サイクロンシューター!!』
銃をブースター代わりにして、フル出力で放って強引に方向転換。
そしてライトニングフォームになり、雷のハンマーが振り下ろされる。
☆
互いのペアが再度向き合う。
現時点では猛達の有利だ。
そして――
「認めざるおえませんね」
「志郎――そう、あなたがそう言うのなら」
志郎が変身を解除した。
続けて舞も変身を解く。
それに合わせて猛と春歌も元の姿へと戻った。
「アナタ達は想定以上に強くなっていました。それとこうまでして試した事を許して欲しいです」
そう言って志郎は頭を下げた。
「いや、志郎さんは何も間違ってはいませんでしたから。それに不謹慎かも知れませんけど楽しかったですから」
「ちょっと猛さん――」
猛の発言に春歌が驚く。
「まあだけど猛さんの言ってる事も分からなくはないですけど」
そして擁護するような発言をする春歌。
それを見て舞はハァとため息をついて、
「結局、私が一番の心配性だったワケね」
と、自嘲する。
「プラスに考えましょう。いい訓練になったと」
「そうね。そう言う事にするわ」
志郎のフォローに舞は納得する事にした。
「さて、立ち話もなんですから――場所を変えて、お約束の真実を明かす事にしますか」
「いよいよですね」
志郎の雰囲気が変わり、春歌も気を引き締める。
どんな真実が明かされるのだろうか。
猛は不安になった。
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