第2話「潜入」
Side ハチ怪人、コウモリ怪人
『どうする!?』
『どうするもこうするもねえ!! 一旦どこかで戻ってアジトへ――!!』
二体の怪人は逃げ惑っていた。
だが人々の目が多すぎる。
一旦人気のない場所で人間体に戻って隠れ家に戻ることにした。
『悪いが消えてもらうぞ――』
その2体の前に漆黒のドクロが現れる。
――ハチとコウモリ怪人はその日、姿を消した。
☆
Side 天野 猛
学園のラウンジで志郎から猛と春歌の二人は調査結果を聞いていた。
「アジトはもぬけの殻。猛君が倒したクモ怪人も学園の警備部の人間が引き取っていったよ」
と、志郎が語る。
「警備部の人から何か情報は?」
春歌は当然の疑問を投げかけるが――志郎は「なにも――」と首を横に振る。
「手掛かり無しですか」
ため息をつく春歌。
「ですがあのタイミングで3体の怪人を送り込んだのは偶然とは思えません。恐らく学園内部に監視網があると見て間違いないでしょう」
「言われてみれば――」
志郎が言う事に猛も合点がいった。
「天村財閥の、自分が動かせるだけ人間は出来るだけ動かしていますが、お気をつけて。そう遠くないウチに再び仕掛けて来ます」
そう言い残して志郎は立ち去って行った。
☆
猛と春歌は学園の屋上の庭園に移動して考えていた。
「意図的にメダルをばら撒いて何がしたいんでしょうか……」
「分からない。けど――この事件だけは、例え探偵ごっこと言われても暴きたい」
「私もです――」
加島 直人のためにも。
今この瞬間にも犠牲になっている人達のためにも。
猛と春歌はこの事件をどうしても暴きたかった。
「そのためには事件を整理しないと」
猛は情報の整理を始める。
☆
デザイアメダル。
人を怪人に変えるだけでなく、精神を狂暴化させる魔のメダル。
学園島の研究施設の連続爆破テロ以降に起きた。
ヒーローの出現もほぼ同時期である。
猛が変身ベルトを手に入れたのもこの時期だ。
☆
「普通に考えれば研究施設での事件は無関係とは思えません」
「僕も同じだよ春歌ちゃん――志郎さんに聞いてみようかな?」
「待ってください」
そこで春歌が待ったをかけた。
「志郎さんがそんな重要な情報を教えないと思いますか?」
「まさか――」
「私も色々と手を貸してもらいましたが、何か隠していると思います」
猛は否定したかったが、それが出来る証拠は思い浮かばなかった。
「……じゃあ、その研究施設に行ってみよう。そこで何か分かるかもしれない」
「はい」
猛は志郎の潔白を証明するつもりで春歌と一緒に調査へ乗り出した。
☆
放課後。
猛達は爆破テロが起きた研究施設後に向かった。
関係者以外立ち入り禁止となっていて人気は感じられない。
せいぜい監視カメラなどがあるぐらいだ。
ここで役に立ったのが春歌だった。
どうやら彼女のスーツは空が飛べるらしく、それで運んでもらい、空中から全体の様子を見渡す感じで潜入したのだ。
「なにもない。廃墟ですね――」
『うん。ここで何が――』
研究施設後に降り立ち、内部を探るが何も残されていない。
警備員が飛んで駆け付けてくる気配すらなかった。
証拠らしい証拠が一つもない。
とうぜん手掛かりも何もなかった。
『怪人!?』
証拠らしい証拠がない事で逆に不信感を感じ始めた時。
大量の足音が聞こえて来た。
まるでホラー映画の怪物のような足取りで次々と怪人がやって来る。
「どうやら正解のようでしたね」
『うん』
まだ正体は分からないが、こう言う手段を取ってくると言う事はそれ相応の何かがまだこの施設に残っていると言うのと同義だ。
春歌は腰のホルスターからハートデリンジャーを引き抜き、猛は赤いレヴァイザー、フレイムフォームになって剣で次々と怪人を倒していく。
『こいつらメダルだけで動いているのか!?』
「デザイアメダルにそんな特性があったなんて――」
自分達の知らなかったデザイアメダルの特性だ。
だが同時に弱い。
『とにかく進もう。怪人が出ている流れを追えば真実にたどり着けるかもしれない!』
「はい!」
二人は気合を入れて次々と怪人を倒していく。
☆
「これは――」
『まだ稼働しているのか?』
やがて地下へと進んでいき、そこで目にしたのは良く分からないがまだ稼働中の機械の数々だ。
カプセルが立ち並び、その中には銀色のメダル、デザイアメダルが次々と誕生していた。
室内は真っ赤。
手短なパソコンのモニターを見るとカウントダウンが始まっていた。
『まさか自爆システム!?』
「どうします!?」
『せめてハードディスクだけでも回収して――』
と言いつつ猛は実行しようとしたが――
『残念ながらそれは出来ない相談だ』
『「ッ!?」』
声がした。声は調整済みで性別は分からない。
現れたのは銀色の人型ロボットだ。
『こいつは学園島のテクノロジーで作られた戦闘用のロボットだ』
さらにダメ押しとばかりに周囲を怪人達が取り囲む。
『まあ、残り時間楽しんでくれたまえ』
そして一斉に襲い掛かってきた。
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