第3話「脱出」

 Side 天野 猛


 研究施設後の地下にて激闘を繰り広げる猛と春歌の二人。

 

 デザイアメダルの怪人は、大したことはない。


 問題は学園島制の戦闘ロボットだ。


 頑丈でパワーもあり、光線を体の各所から放ってくる。

 しかも敵とか味方とか構わずに光線を発射するので厄介だった。

 逆に言えば邪魔な敵を排除してくれたとも言える。


「どうしますか!?」


 光線銃、ハートデリンジャーを乱射しながら指示を請う春歌

 交戦はロボットに当たっているが大してダメージは与えていないようだった。


『何時爆発するか分からない!! ここは一旦逃げよう!!』


 そう言ってレヴァイザーは緑色、サイクロンフォームになり、手に持った銃を天井に向ける。


『サイクロンシューター!!』


 一際大きな光弾が銃口から放たれ、銃身の先にあった天井が崩れ落ちて破片がロボットの周辺に落下。

  煙が巻き起こる。


『今だ!! 逃げるよ!!』


「は、はい!!」


 二人は元来た道を引き返す様に逃亡した。

 


 爆発が起きる研究施設。

 施設全体を吹き飛ばすのではなく、あの地下施設だけを木っ端微塵に吹き飛ばすだけの物のようだ。


 だが一安心は出来なかった。

 脱出した先で大勢の相手が待ち受けていた。


「学園の警備部!?」


『ちょっとヤバい事になったね――』


 学園の警備部がこのタイミングで駆けつけて来たらしい。

 そして左腕の腕時計のようなアイテムにはデザイアメダルを所持していた。


「学園の警備部の人間がデザイアメダルを――話に聞いてましたが、まさか本当にグルだった?」


『みたいだね』


 天村志郎から内通者の存在は予め聞かされていたが、こうして見ると衝撃度が違う。

 学園の警備部の人間はまるで海外のFPSゲームに出て来るSF感溢れる兵士のようなデザインになる。


 そして後ろにはあの爆発を逃れたらしい戦闘ロボット、デザイアメダルの怪人の生き残りまでやって来る。


 包囲された形だ。


「どうします?」


『下手に逃げたら無関係の人々に被害が出る。ここは戦おう』


「分かりました!!」


 そして春歌は飛び上がる。

 スーツの胸部の丸い出っ張りがパカッと開く。


「ハートブラスター!!」


 グルっと一回転して薙ぎ払う様に光線を放つ。

 突然の行動に猛も驚いたが負けじとサイクロンフォームの銃で負けじと薙ぎ払う。


 それを逃れた敵だけを相手にしていく流れになっていく。


『クッ!!』


 ロボットからの一撃、二撃、三撃とダメージを顧みない猛攻を受ける猛。


「この人達――何時もの怪人と違う!!」


 春歌もデザイアメダルを投与した兵士達に苦戦していた。

 複数体現れるのは珍しい話ではないが理性的に攻撃してきて連携までしてくる相手は初めてだった。


『ならば!!』


 このままの状況はいけないと思い、猛は新たなフォームを開放する。

 全身から雷が発生して相手を殴り飛ばす。

 同時にピコピコハンマーのような黄色の鈍器が握られる。

 

 レヴァイザーライトニングフォームである。


『はぁあああああああああ!!』


 ドゴン、ズドン、ガゴン!!


 物凄い重量音が鳴り響く。

 攻撃が直撃するたびにロボットのボディが粉砕されていく。


『これ程のパワー……中々興味深い……』


 ロボットが――ロボットを通してこの戦いを見ている誰かがそんな事を言うが構わず猛はトドメを刺す。


『ライトニングブレイク!』


 電のエネルギーを纏ったハンマーの一撃を受けて戦闘ロボットが大爆発を起こす。


「私も負けてられない――」


 それに勇気づけられたように春歌も自分のペースを取り戻していく。

 空中を飛び、旋回するように交戦銃ハートデリンジャーを乱射。

 そして弱ったところを胸部からハートブラスターを発射して複数人纏めてフィニッシュを決めた。


『戦いは終わったけど、どうしようこれ?』


 これ程の大惨事を放置しておくわけにもいかないと猛は思った。


 そんな時、リムジンがやって来る。

 中からは――


「いや~派手にやりましたね」


 天村 志郎が現れた。


「志郎さん――お話頂けますでしょうか? この施設で一体何があったのか?」


 邂逅一番、春歌は志郎にそう言うが――


「……」


 志郎は黙り込んだ。


『どうしたんですか?』


「話を聞けばもう引き返せなくなります。それでも聞きたいですか?」

 

 真剣な面持ちで志郎は二人に問いかけた。


『つまりそれだけヤバい内容だって事だね』


「猛さん?」


『春歌ちゃん。僕も真実は知りたいけど、一度よく考えた方がいいと思う』


「……そうですね」


 猛にそう言われて春歌は引き下がった。


「ご理解いただけたようで何よりです。この場の事は僕に任せてゆっくり休んでください」


 そして猛と春歌はこの場を後にした。



 日が落ち、夜になる。


 二人は帰路につきながら今日起きた出来事を反芻する。


 人に寄生しない、メダルだけで実体化した大量のデザイアメダル。


 地下のデザイアメダルの製造プラント。


 謎の戦闘ロボット。


 学園の警備部が腕時計のようなデバイスを通してデザイアメダルを使用していたこと。


 そして――


「話を聞けばもう引き返せなくなります。それでも聞きたいですか?」


 志郎の一言。


 猛は一度冷静になって考えてみようと思った。


 本音を言えばこれ以上何が起きるのかと恐くなったのもある。


 同時に無関係の誰かを巻き添えになるんじゃないかとも思った。


 チラッと猛は春歌を見る。


 彼女も考え込んでいるようだ。


 何を考えているのか分からないが――ただガムシャラに前に進むような真似はしなくてなによりだと思った。


(本当に、どうしようか――)

 

 猛は夜空を見上げるが答えは出なかった。

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