第6話「事件の断片」
Side 天野 猛
天村財閥の施設内のラウンジで猛、春歌、舞、志郎の4人は集合し、志郎の口から説明が始まった。
「順を追って説明しましょう。この学園島にはジェネシスと呼ばれる極秘機関が存在しました」
「ジェネシス?」
志郎の説明に春歌が首を捻る。
「ようするに漫画やアニメに出て来るような超テクノロジーを研究する組織よ」
舞が補足するように説明し、
「アナタ達が昨日忍び込んだ研究施設もそのジェネシスの施設だったの」
続けてこう付け加える。
「なんですって?」
「舞さんの言う通りですね。あの爆破テロ事件はジェネシスのテクノロジーを狙った何者かによるテロだったのです」
ここで猛はある仮説が思い浮かんだ。
「もしかしてデザイアメダルって――ジェネシスが産み出した」
「いいえ、違います」
「え? 違うの?」
「私もジェネシスのメンバーでしたからある程度の研究内容も把握しています」
どうやら志郎は事件の当事者だったらしい。
「恐らくですがチェンジメダルを改良――いや、悪用できるように改造を施して広めたのがデザイアメダルでしょう」
「そのチェンジメダルと言うのは?」
春歌はチェンジメダルと言うワードに食いついた。
「平たく言えば外宇宙産の未知のメダルですね。デザイアメダルと違い、中毒症状などはありませんが、その代わりにメダル自身が使用者を選ぶのが特徴ですね」
ここまで聞いて猛は「それが盗まれたんだね?」と尋ねた。
「猛君の想像通りです。他にも幾つものテクノロジーが盗まれました。この事件には内通者――そして黒幕は現段階では分かりませんが日本政府が絡んでると思われます」
「日本政府!?」
その単語に春歌が驚いた。
「学園の警備部だけでも腹一杯なのにスケールが一気にでかくなったね」
と、猛も驚き気味に内心を吐露する。
「日本政府は学園島――天照学園の事をよく思っていませんから。出島にある天照駐屯地や基地なんかもその証拠でしょう」
志郎が言う出島とは天照学園の玄関口にある、天照大橋を渡った先にある日本本土にある街だ。
そこには自衛隊の基地、駐屯地が密集している。
理由は様々だが政治に詳しい人間からすれば、自衛隊の基地、駐屯地が出島にあるのは天照学園に圧力を掛けるためだと言われている。
「今はブラックスカルと呼ばれるカラーギャングと、内通者が協力してデザイアメダルのメダルをばら撒いているのが事の真相です」
「天村財閥の権力でどうにかならないんですか?」
当然の疑問を春歌は投げかける。
「いくら天村財閥が理事長とは言え、内通者は警備部門や軍事部門などを統括している理事会の役員の一人ですからね――」
「そこまで分かってるのに手が出せないんですか?」
猛も当然の疑問を抱いた。
「バックには日本政府がいますからね。それを無視して強行した場合、最悪学園を二分する抗争になります。そうなったら天村財閥の権力でもどこまで政府の介入を抑えられるか……」
どうやら政治的なアレコレで問題は単純ではない事を猛と春歌は理解した。
「実際、日本政府が天照学園の事を気にくわないのは天照学園が上手く行きすぎてるからなのよ。政府のやり方についていけないからって学園島に流れた人間は多いらしいわ」
補足するように舞が説明する。
「まあ長々と話しましたが、警備部門とカラーギャング、理事会と日本政府がグルに
なっているんですね」
志郎は「さらに噛み砕いて解説するなら」と説明を続ける。
「日本政府、理事会の離反者が今回の事件の黒幕で、警備部門とカラーギャングはそいつらの下っ端と言う事です」
「大体は理解できたよ。それでどうするの?」
猛は話を促す。
「カラーギャング、ブラックスカルから手を付けるのが妥当ですかね。恐らく事件のスケープゴート役でしょうか何かしらの形で各勢力との繋がりがある筈です。その繋がりから辿っていくしかないでしょう」
との事だった。
☆
話はお開きになり、猛と春歌は天村財閥のラウンジで二人きりになる。
「想像以上にスケールが大きい話だね」
「でも、私達を遠ざけたかった理由が分かる気がします」
春歌が言う様に中学生がどうこうするレベルを明らかに超えている内容だ。
遠ざけたくなる理由も無理はないだろう。
「志郎さんが僕に最初、協力を求めた理由(第1話参照)も目に届く範囲に置いてヒーローごっごの段階で踏みとどませるためだったんだね――」
「私もそんな感じだったんでしょう。まあ、舞先輩と志郎さんの側で考えれば無理からぬ事ですが――たぶん同じ立場だったらお二人と同じ事をしていたと思いますし」
猛と春歌は舞の志郎の考えに一定の理解を示していた。
☆
Side 揚羽 舞
天村財閥のラボにて。
志郎がスーツの整備作業をしていた。
「で、実際のとこどうだったの?」
その背中を見詰めながら舞は志郎に問いかけた。
「なにがですか?」
「真実を話すの」
「実際はある程度の段階が来てから話すつもりでいました。だけど中々タイミングが分からなくて――と言うのが本音ですね」
「そして私が、まあなんて言うかその、ハードル上げて、なんかこう、引っ込みがつかなくなっちゃったのよね」
「終わった後(第5話ラスト辺り参照)も言いましたがプラスに考えましょう」
「……ありがとう」
平静を保ちつつも照れながら舞は志郎に礼を言った。
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