不啜のヴァイロンエルマ
M.S.
不啜のヴァイロンエルマ
【ヴァイロンエルマは不敵に
「私、ヴァイロンエルマは吸血鬼ではあるものの、人の血を吸うという────
「
【息も
【過去に殺してきた吸血鬼狩りに、何度もされたその質問に、ヴァイロンエルマは
「あぎっ、ぐっ......、が......」
「愚問とはそれの事よ。女性に摂食行動の
「ふ、ふん......、俺達人間は吸血鬼なんぞに
【兵卒の言葉が終わりきる前に、その喉に手刀が斬り払われ、そうして最後の兵卒は絶命した▼】
【その首筋から
「全く、私達吸血鬼と人間が同じ言語を扱わなければならない事実に、内なる悲しみを禁じ得ません。......何故神は、私達吸血鬼と人間を同じ大陸に
【吸血鬼狩り達の死体をぐるりと両の紅眼で
【そして口元から零れそうになった口腔粘液を指先でつぅ、と
「どうやら、今回の吸血鬼狩りの中には、私の子供達に相応しく
────
「「「お帰りなさいませ、お母様」」」
【そのようにヴァイロンエルマの帰りを迎えたのは、三人の
【その三人は
【その昔、ヴァイロンエルマの母が攫ってきた
「お母様、お
【そう言ったのは長兄────ペールライト▼】
「では、僕は替えのお洋服を用意して参ります」
【そう言ったのは次兄────ディムライト▼】
「では、僕は
【そう言ったのは末弟────トワイライト▼】
【ヴァイロンエルマが人里に繰り出して攫ってきた三人なので歳の
「お前達、ありがとう。今日の悪党共も干物のような奴らばかりだったとは言え、少々疲れたわ。私が体を
【円形の大きな
────
「大事な話というのはね────」
【三人の子供達が用意した食事を終え、茶を飲みほしたカップをかちゃりとソーサーに置き、ナプキンで口元を軽く拭いてからヴァイロンエルマはそう切り出した▼】
【四人で使用するには
「ここ最近悪党共の襲撃が多くなってきているのは分かっているわよね。その度に私はそいつらを殺してきた訳だけれど......」
【ここで言う〝悪党〟というのは無論吸血鬼狩りの事であって、〝悪党〟と可愛らしい呼称で三人に言い含めているのは、ヴァイロンエルマが三人の事を、自身の愛すべき子供扱いをしている表れとも言えるが────だからと言ってヴァイロンエルマが自身の血と
【
【であるから、三人の子供達は、主人が人の命を
【そしてそのヴァイロンエルマの情操教育の教導の仕方こそが、幼子のみに焦点を当てて攫い、
「最近は奴らも私だけの手には余るようになってきたわ。勿論私がその気になれば十も百も物の数ではないのだけれどね。......けれど、やはりどうしても労働というのは性に合わないの。そこでね────貴方達三人にも悪党退治を手伝ってもらおうと思って」
【そう言われ、三人の子供達は当惑する。いくら思想を吸血鬼の精神体系に
「けれど、お母様......」
「言うまでもなくこの命、お母様の物では御座いますが......」
「僕達......、戦い事の心得がありません」
【その点、どのように埋め合わせれば良いでしょうか、と三人の子供達はそれぞれ
「心配しなくても大丈夫よ。私の《
【《大棺》────ヴァイロンエルマがその身に納める《銀椿》が人の四肢を奪う
【吸血鬼であれば誰しも《大棺》を種族固有の能力として有しているが、その容量は魔術に対する
「そういう事でしたか」
「私達の
「この事態を見据えて悪党どもの四肢を集めていらしたのですね」
【三人の子供達は、ともすれば
【後は、四肢を接ぎ、武具を用意すれば、三人は
「「「では、早速私達に四肢をお接ぎ下さい」」」
「ええ、そうしましょう。私の子供達。......でも、
『今夜、夜伽する子供を選んで下さい▽
▷ペールライト
ディムライト
トワイライト』
「ペールライト、
────
【食堂で別れて
【ヴァイロンエルマの寝室、その扉を叩く音が、
「失礼します。お母様......」
【おずおずと言いながら現れた姿は、言いつけを守ってやってきたペールライトである。その名の通りに薄い色素の瞳が揺れているように感じるのは、何もチェストの上で同期するように揺れる
「ええ、いらっしゃい......」
【ベッドサイドに寄ってきたペールライトを
【薄い
「......
「お母様......、お母様......」
【ペールライトの瞳は
「お母様、お言葉では御座いますが、ご自身の生まれを私達の為に憂いたりしないで下さい。......お母様は、元より私達のお母様。そこに人間だろうが、吸血鬼だろうが、生まれなど関係ありません。
【その言葉を
【ヴァイロンエルマの眷属────その子供人形の四肢接ぎが、始まる────▼】
『ペールライトとの夜伽を行います▽
ペールライトの現在の四肢を削ぎ、新たな四肢を接ぎます▽
又、四肢に加え眼球と舌も移植する事が出来ます▽
接ぎ・移植に使う四肢・眼球・舌を《大棺》から選択して下さい▽
注意、
・子供達のレベルより高いレベルの四肢・眼球・舌は接ぎ・移植に使えません▽
・右脚と左脚に接ぐ脚の長さは出来る限り揃えて下さい。長さが違う脚を右と左、それぞれに接ぐ事も可能ですが、左右の脚の長さが違う程、その子供の
・右腕と左腕に関しては腕の長さを揃えなくてもデメリットはありません▽
・眼球についても腕・脚同様、左右別々に移植する事が出来ます。右瞳・左瞳の種別が違っていてもデメリットはありません▽』
『《大棺》に保管している眼球、舌、四肢▽
▷刺剣使いの左腕 LV6
魔術師の舌 LV4
狩人の右脚 LV4
大斧使いの右腕 LV3
道化の舌 LV2
魂縛の瞳 LV1
聖職者の舌 LV4
貴婦人の艶やかな右脚 LV7
物乞いの舌 LV7
盗賊の左腕 LV4
密猟者の左脚 LV6
歪んだ聖者の瞳 LV8 .........etc』
『では、以下のように接ぎ・移植を行います。
ペールライト LV1
・役 :吸血鬼の侍従
・右瞳:ペールライトの瞳 ─
・左瞳:ペールライトの瞳 ─
・舌 :ペールライトの舌 ─
・右腕:ペールライトの右腕 ─
・左腕:ペールライトの左腕 ─
・右脚:ペールライトの右脚 ─
・左脚:ペールライトの左脚 ─
↓↓↓
・役 :刀剣使い
・右瞳:
・左瞳:ペールライトの瞳 ─
・舌 :ペールライトの舌 ─
・右腕:刀剣
・左腕:ペールライトの左腕 ─
・右脚:遊牧民の右脚 LV1
・左脚:遊牧民の左脚 LV1
接ぎ・移植に使われた四肢・眼球・舌は失われず、夜伽をすれば再度、接ぎ・移植に使う事が可能です▽』
『接ぎ・移植を始めますか?▽
▷はい いいえ』
────
【次の朝、二人は窓硝子の向こうから
「おかあ、さま......」
「良く、頑張ったわね、ペールライト。.....偉いわ」
【
「僕はこれで......、強くなったのでしょうか......?」
「ええ。戦い方は四肢が憶えているわ。心配しなくても大丈夫よ」
【母のその言葉にペールライトは安堵し、ころころと無邪気に笑って見せた▼】
【ヴァイロンエルマも
「シーツが汚れてしまったわ。これを片した後に、他の二人と一緒に朝食を食べましょうね。それと────」
【ヴァイロンエルマはそこで言葉を区切り、真剣味を帯びた表情になる▼】
「どうやら、森のさざめきが
────
【朝食後、茶を
『ヴァイロンエルマはどうする?▽
▷洋館周囲の森を探索し、はぐれ吸血鬼狩りや吸血鬼狩りの野営地を探し当てて襲撃する
人里に降りて、街から新たに子供を攫う』
【ホールに集まった三人の子供達は、ヴァイロンエルマの指示を待っている▼】
「さて、ゆっくり四人で過ごしたいのも山々だけど、そうもいかないわ。近くまで悪党が来ているみたい。片付けてしまいましょう────昼食の時間までにね」
「「「はい、お母様」」」
【ヴァイロンエルマはそう言って、くるりと洋館の入り口に向いて────両開きの大扉を押して、三人を連れ立って外に出た────▼】
【四人が《
【どうやら双刀の使い手らしい。こちらの姿を認めたのか、斜め十字に背負った二本の得物を────抜刀した▼】
【それを受けて四人も、ヴァイロンエルマとペールライトを前衛に、臨戦態勢に入る▼】
【互いに歩み寄り、互いの間合いに入るその直前、そのぎりぎりにまで
【するとゆくりなく、双刀使いの方から、口を開いた▼】
「ほう......、人間の子供を連れた吸血鬼が居るとは本当だったか。これは面白い。伝承にすら無い
「吸血鬼の領域に単身で入ってくる貴方も中々面白くってよ。もう貴方が故郷に帰る事はなく────
「いやなに、足手纏いを連れてきても、壁にもならんのでな。そちらは三匹程、盾を連れているようだが......。子供を盾にする吸血鬼というのも、これもまた面白い。聖者が見たら卒倒してしまうだろう」
「いいえ。聖者を前に、卒倒すら許しはしないわ。いつも────卒倒する前に殺してしまうから」
「その減らず口もまた、面白い」
「貴方も武人の割には
【一通り挑発し合い、互いに
「はははははははは!」
【のだが▼】
「はははは。────ほざけ」
【
【双刀使いは、
【お喋りは終わり、とも取れる合図を受け、ヴァイロンエルマは喉から一振りの刀────《銀椿》を引っ張り出し、それをペールライトの
【放り投げられ、回転して地に突き刺さった《銀椿》の
【その姿を見た双刀使いは────
【齢十五の子供が隙が少ない構えをして見せた事も、驚愕に値する事実ではあるが、双刀使いが驚きを見たのはそこではない▼】
【見開いたその目は、ペールライトが握る《銀椿》に向いている────▼】
「......っ!」
【それを見て取ったヴァイロンエルマは────
「────そうよ。その昔、失踪した吸血鬼狩りの
「ぐっ......」
「それを今、この私が所有しているその意味────
「ふん......。今、私が、シュナイデンを超えれば良いだけの話だ......!」
「その強がり程、面白いものもないわね。ペールライト────行きなさい」
【双刀使いは苦虫を潰したような顔のまま
『吸血鬼狩りの刺客の攻撃!
ペールライトに12、16ダメージ!▽』
『ペールライトの攻撃!
吸血鬼狩りの刺客に19ダメージ!▽』
『吸血鬼狩りの刺客の攻撃!
ペールライトに13、13ダメージ!▽』
『ペールライトの攻撃!
吸血鬼狩りの刺客はパリィした!▽』
『ペールライトは1ターン体勢を崩す!▽』
「もらったぞ!餓鬼!」
【
「がふっ」
【代わりに血を見せたのは双刀使い。その
「なんっ......、お前」
【二人の、一瞬の攻防の
「ぐ、くそっ......、お前......お前......」
「ふふふふ。〝卑怯〟という一語は人間由来の言葉で、吸血鬼由来の言葉じゃないのよ。〝
「っ......!」
『ペールライトの緊縛の瞳が発動!
吸血鬼狩りの刺客と視線が重なる!▽』
『吸血鬼狩りの刺客は2ターン硬直状態!▽』
「どうやら、貴方はどちらにせよ負けていたようよ。手を出したのは、《銀椿》じゃ命までは
「くっ、くっそおおおおおおおお────」
【その
『ヴァイロンエルマの致命の
吸血鬼狩りの刺客の心臓を潰した!▽』
『吸血鬼狩りの刺客は息絶えた!▽』
『吸血鬼狩りの刺客はファルシオン、ファルシオン、双刀使いの右腕、双刀使いの左腕、剣士の右脚、剣士の左脚を落とした!▽』
【ヴァイロンエルマは無残な死体を
「あら、やっぱり舌は一枚なのね。
「ふっ、ふふ、あははは」
【それを聞いて、三人の子供達は吹き出す▼】
【一緒になってヴァイロンエルマも口を
────
【時は流れ数年後、ヴァイロンエルマの拠点にして
【そして遂に本日、ヴァイロンエルマと十四人の子供達は吸血鬼狩りの総本山、その城下町の目抜き通りの真ん中を傲慢に踏み鳴らし、城下に迫ったのだが────▼】
【そこに待ち構えていたのは史上最強の吸血鬼狩り、シュナイデンの
【これにはフリーデンの側近から街の衛兵、
【黒髪に紅眼のヴァイロンエルマ▼】
【銀髪に碧眼のフリーデン▼】
【頭髪と瞳に宿る色を除いて見れば────
【そして遂に、二人は同時に、同じ結論に至ったらしく────互いに腹を抱えて笑い始めてしまった▼】
【因縁のある仇敵同士が笑い合うという異様を極めた場面に、ヴァイロンエルマとフリーデン、二人以外の
【先んじて口を開くのは、フリーデン────▼】
「成る程、成る程。私が吸血鬼に
「要するに────私達の父親が、不義を働いたというところかしら」
「と、言う事はなに、私達は血族と言う訳か」
「異父姉弟では、血族と言うより
「はははは、それは言い得て
「ええ。貴方の想像の通り────私達の父であるシュナイデンから、私が受け継いだこの刀こそ、吸血鬼殺しの《銀椿》と言う訳ね」
【フリーデンはそれを聞き、わざとらしく肩を落として、
「全くあの
「それか、両方の母親を連れ立って行ったかも」
「ふふ、あまりしたくない想像ではあるな」
【そこまでは
「で、どうする? 貴公」
「......」
「私達はこの大陸の吸血鬼を減らし続けてきたし、貴公らは逆に私達の血を
「全く、その通りなのかもしれないわ。そしてもし────私達の父がこの局面を見越しての、
「そこまで考えのある父親だったとは思えないが......、ともあれ、
「そう、ね......。貴方は、父がその昔、私の母にやったように私を口説いたりはしないのかしら?」
「はは、実は、少し考えてもみている。父はよく物思いに
【吸血鬼の女性とは、
『ヴァイロンエルマはどうする?▽
▷人間に対し、十四人の子供達と共に徹底抗戦を宣言する
和平を結び、フリーデンと共に失踪した両親を捜索する』
「私は────」
『ヴァイロンエルマは────を選択した▽』
不啜のヴァイロンエルマ M.S. @MS018492
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