運命を変えたい主人公と、重要イベントキャラの脇役。脇役は真のエンディングを迎えるために抗う

@nekoyamanekota2

001.プロローグ


 いまから千年も昔のこと。


 世界に溢れた魔物たちが狂乱し、群れを成して世界を破壊する『大破壊』が起こった。人々よりもはるかに優れた力と人を食い生命力を蓄える魔物の大行進は半年で世界の一割を破壊したという。戦乱と魔物の発する瘴気によって森は焼かれ、湖は毒を持ち、数多くの国が世界から消えていった。


 世界の三割が破壊されてしまったとき、これまで交わることのなかった残された国々がついに手を結んだ。各国は国を代表する七人の優れた人間を救世主とし、また七人の救世主は大破壊に立ち向かった。


 一人倒れ、また一人と命を散らし、多くの犠牲を出しながらも残った四人はついに大破壊を食い止めた。


 残った四人の名をアスターク、ゼルナス、ジーク、ロザリー。


 彼らは世界の危機を救った四人の英雄として四つの大国の王となり、英知を持って破壊された世界に文明を築いた。そして長い月日のなかでアスターク、ゼルナス、ジーク、ロザリーの四人は王から神へと姿を変え、天から人々の生活に恵みを与えているという。


 それから千年、文明の栄えたこの世界に争いはなく人々は神から与えられた魔力を使い生活の糧とし平和な日々を過ごしていた。





 これで何度目の転生だろうか。


 頭がおかしくなりそうなほどに生まれ変わりを続けていた。


 何度も死に、また赤子から始まる地獄ようなループ。


 生まれ変われば、これまで築いてきた関係も全てが無に還る。


 しかし――自分だけはその記憶を持っている。同じ時間を過ごしてきた友も、愛情を注いで育ててくれた家族もいない。記憶を持ちながら何人もの生を全うするというのは耐え難い苦痛だった。


 苦痛から逃げようとしても、神はそれを決して許してはくれない。


 運命に立ち向かえば、必ずといってよい程訪れる死。狂乱する魔物たちの鋭い牙に、爪に、そして瘴気に焼かれてしまう。自分だけではなく愛する人も家族も友人も。全てがいなくなってしまう。


 自分が一体何をしたのだろうか――、何故このような目に合わねばならないのか。


 何が神が与えた恩恵か。


 これは神の与えた罰ではないか。

 唾を吐きいくら天にいる神を罵倒したところで運命は変わることはない。


 地獄のループを抜けだすための希望はただひとつ「世界を守ること」

 それが終わるまで安らぎの時間はやってこない。

 

 しかし、並外れた力を持ってしながらも世界を守ることは叶わない。


 一体どこで何を間違えているのか。

 もう少しで全てが終わるという一歩手前でいつも間違えてしまう。


 始まりの街か、終盤か?


 わからない、わからない。


 次こそは――と、思うと同時にドロリと溶けた意識。


 数多もの選択の中から、たったひとつの正解を導き出すために、今日もまた死と生を繰り替えす。



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