第3話ルール説明
「どうも皆さん、私は「ノア」このゲームの管理者です。早速ですが皆さんには殺し合いをしていただきます。」
殺し合い
たった今、このゲーム?の管理者らしい「ノア」と名乗る赤い玉は確かにそう言った。
いよいよデスゲームらしくなってきたじゃないか。
「まずは、皆さんの手元にあるであろう、「スマートフォン」を出してください。私の不手際でもない限り、画面には「player menu」と表示されているはずです。」
・・・なるほど、あれは故障ではなく、コイツの仕業だった訳か。
僕はポケットからスマホを取り出し、画面を確認してみる。
確かにそこには、朝見た時と同じく「player menu」の文字が並んでいた。
「今よりそれは、「スマートフォン」としての機能を全て失い、皆さん方の「ステータス」を確認する媒体となります。試しに画面に触れて下さい。」
ステータス、か。
僕は、ノアの言う通りにスマホに触れてみた。
すると、スマホには、このような画面が表示された。
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Name 「東間京介」
Gift 「————」
Soldier「————」
Energy 「100%」
========
なるほど、本当にゲームみたいだな。
ステータスの欄に棒線が引かれているのは、追って更新されるということか?
僕はその後、しばらくスマホを確認した後、あたりを見回した。
————その場にいた真理雄と睦月を含むほとんどの生徒はノアの説明を聞き、スマホの画面を確認していた。
何も彼らは、ノアの提示した「殺し合い」という事柄を完璧に理解し、その上で行動に移しているという訳ではない。
こんな状況で、ノアの指示に逆らうこと自体がリスクのある行動だと、理性の奥底で理解しているだけなのだ。
————しかし、そんな常識も通じない人間もこの中にいた。
「いい加減にしろよテメエ!!」
突如、どこからか怒気を孕んだ男の声が耳に入る。
叫んでいるのか、怒っているのか半々といったそんな形相で、1人の男子生徒はノアのいる場所へと歩み出た。
「いきなり、俺らをこんなとこに呼び出しといて、「殺し合い」だあ!?ふざけじゃねえよ!!」
「大体どんな手品を使ったのか知らねーがなあ、俺をこんな場所に呼び出しといてクソつまらねえ茶番に付き合わせやがって!!さっさと返しやがれ!!」
「現在、ルールの説明中です。説明の妨げになるような行動は控えていただくようにお願いします。」
「ああ!?何がルールの説明だよ。そんなもんお前の茶番だろうがよ!!舐めてんじゃねえぞ玉野郎!!」
男子生徒の怒声が校庭中に響き渡る。いつの間にか生徒全員の注目がそちらに集まっていた。
しばらくすると、ノアはしばらく黙り込んだが、男はそんなものもお構いなしに言葉を続ける。
「へっ、あんだけ大それた事ぬかしてた割には、反論もできずダンマリか?ああ!?」
男は自分の言葉にノアが萎縮したと考え、ノアに怒号を浴びせ続ける。
それから1分もたたない内にノアは次の言葉を発した。
「————————-そうですか、ならば仕方がありません。」
「あ、ああ?」
それまでの穏やかな口調とは一転して無機質な声色で言葉を発したノア。
その様子に、その場にいた全員は何か不吉なものを感じ取ったに違いない。
それはその男子生徒も例外ではなかったようで、一瞬の内に額に冷や汗が滲んでいた
「丁度いい、あなたには、とある役目を担っていただきましょう。」
その言葉を言い終えるか、終えないかの瞬間、男子生徒の体が宙に浮き始めた。
それと同時に男子生徒の体に変化が生じ始めた。
「あ、が、」
瞳は悍ましい程に開かれ、
身体中から血液が吹き出し、
発する痛みに耐えられなくなってきた所で
彼の体は膨張を始めた。
「あ“あ“あ“あ“あ“あ“あ“ッ」
男子生徒の鼓膜を破るかの如く絶叫が、校庭中に響いた。
「「このゲームのリアリティの演出」そのための材料としての役割を、ね。」
しばらくして男子生徒の体はみるみる肥大してゆき・・・・・。
「た、すけ、て」
彼の血と臓物を撒き散らしながら破裂した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?
彼の体だったモノは今、ノアの近くで散らばっている。
それは原型を留めないほどに破壊されている訳ではなく、千切れた部位がなんであるかは辛うじて判別できる程だった。
だが、尚のことそれはグロテスクに見える。
猛烈な非現実間、込み上げてくる嘔吐感、そして絶え間なく聞こえてくる誰かの悲鳴に僕は耐えられず。
僕の意識は闇に落ちた。
・
・
・
・
・
「 —————氏」
・・・・・・ん?
誰かの・・・・、声?
「—————間氏」
この・・・・、呼び方は・・・・。
「東間氏っ」
「真理雄・・・・・か?」
「おお、東間氏。やっと目が覚めたでござるな。」
「心配したっすよアズ君」
「・・・・・ああ、」
見えるのは真理雄と睦月の顔。
どうやら気絶していたらしい。
返答の後、僕はゆっくりと立ちあがろうとした。
すると
「ッ!?」
「東間氏!?」
「アズ君っ!?」
突如、いくつかの記憶がフラッシュバックする。
そ、うだ。さっき、ノアが何か言ってて、そして、怒声を上げてた、1人の男子生徒が・・・・・男子・・・・生徒が・・・・。
「っはあ、はあ、」
呼吸が荒くなる、
この感覚はなんだ。何か、得体の知れないものに初めて触れる感覚、開けてはいけない扉を開けてしまったような感覚・・・・。
初めて明確な「死」というものに触れた僕は、ただ呆然とする他になかった。
・
・
・
・
・
・
辺りの混乱が収まるまでしばらく時間を要したが、しばらくすると
「そろそろ、ルール説明を再開します」
そんなことをノアが言うので、なし崩し的にルール説明が再開された。
「まず、このゲームについてですが、まあ一般的なフィクションで語られる「デスゲーム」に類似したものだと考えてもらって構いません。」
デスゲーム
先程までどこか現実感に欠けていたその言葉はノアの「演出」によって、その場にいた全員の認識を改めた。
「「密室空間に閉じ込められた複数の人間が生き残りを欠けて争い合う」これはそういうゲームです。」
改めて聞くと、自分が今とてつもない非日常の中にいることを思い知らされる。
「さて、デスゲームを構成する要素の一つに密室空間というものがありますが」
そうか、それがこの校庭——————
「範囲は、この街全域に及びます」
は?
「皆さんには、この街全体をフィールドとしてゲームを行なってもらいます。」
—————広い。こんなの、ゲーム終了まで何日、いや、何ヶ月かかるんだ?
「デスゲームと聞くと最後の1人になるまで殺し合う、というものをイメージしてしまう方もいるかもしれませんが、ご安心下さい。状況によっては複数人が生き残る
場合もございます。」
複数人・・・・・か。
僕はこの時、真理雄や睦月を始めとした文芸部員といった自分の知り合いのことを頭に思い浮かべた。
彼、彼女らには、生き残って欲しいものではあるが・・・・。
「さて、ここでこのゲームを進めていくにおいて重要な要素の説明に入ります。」
重要な要素、まあ何を言うかは大方察しはついている。
「他プレイヤーへの攻撃手段、そしてそれに対しての自衛手段についてです。」
そんなことだろうとは思った。
「皆さんの攻撃手段は大きく分けて二つあります。」
「一つ目はSoldier、これは言葉通り皆さんの護衛、又は他プレイヤーへの攻撃を担う「兵士」を各プレイヤー1体ずつ獲得できます。」
なるほど、ステータスの内のSoldierはこう言うものだった訳か。
「このsoldierには合計7つのタイプがあり、それぞれ「shooter」(シューター)、「crusher」(クラッシャー)、「blader」(ブレイダー)、「sniper」(スナイパー)、「ranger」(レンジャー)、「crafter」(クラフター)、blocker(ブロッカー)という独自の呼称を持ちます」
タイプ・・・・・・・、ゲームでいう属性のようなものか?
「プレイヤーが亡くなった場合、soldierは消滅し、soldierが一定以上のダメージを受けた場合、一定時間soldierはその機能を停止しその期間soldierは消滅します」
「soldierのタイプに関しては、ステータス画面にて詳しい説明がありますので後ほどそちらをご確認ください。」
「次にgiftの項目に関してです」
「giftは、weapon(ウェポン)、skill(スキル)の2種類があります」
「weaponは文字通り、戦闘用の武器や特殊な効果を持つアイテムを入手できます」
「skillは飛行能力や透明化能力といった特殊能力を得ることができます」
なるほど、giftか。自衛手段にしたり、soldierの行動のサポートも可能だろう。
どっちみち重要な項目であることには変わりない。
「giftは獲得したsoldierによって確定します。それはその各soldierに関するものだったりsoldierの及ばない範囲の行動を補うものであることが多いです。」
戦闘面についてはこれくらいか・・・。
「次にヴィランについての説明に入ります」
ヴィラン・・・・敵?
どう言うことだ。
「ヴィランとは、端的に言うとフィールド上を彷徨いているロボットのようなものです」
「ヴィランはプレイヤーを捕捉すると襲いかかってきます。これを撃退するとsoldierの能力値が上昇します」
経験値稼ぎのようなものか。
「ヴィランはそのスケールや能力に応じてsoldierが得られる経験値が変動します。強力なヴィランを討伐できればその分多大な経験値を獲得できます。」
ヴィラン、これも重要な要素だ。
「最後にプレイヤーの勝利条件についてです」
!!、来た、勝利条件。
「プレイヤーの勝利条件とは——————」
それは。
「————七つのタイプのsoldier所持者をそれぞれ殺害した状態でゲーム終了まで生き残ることです。」
なんだ・・・・・・・それ。
つまりそれは、最低でも七人の殺害は必要ということ。
できるのか?、僕に。
「ゲームの期間は二週間程、終了と共に条件を満たせなかったプレイヤーはゲームオーバーとなり自身のsoldierに殺されます」
「以上で大まかなルール説明を終了します。10秒後、皆さんをフィールドに一定の距離を保ち転送します。」
「なっ」
その説明を聞いた瞬間、辺りが大きく騒めく
いきなり過ぎる。
転送、確かにノアはそう言った。
言葉のニュアンスから考えるに、もしかしたら周りの人間に接触していたらその人物と同じ場所に転送される・・・・可能性としては有り得るだろう。
そう考え、僕は真理雄と睦月に手を伸ばす・・・・・
「0、それでは皆さんご健闘を」
だがその目論見は一歩遅かったようだ。
僕はここに呼び出された時と同じような頭痛を感じ、意識を失った。
彼の箱庭 @anaberukato
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