声は聞こえずとも

 妹のポートレイトを撮り続ける写真家の、ちょっと不思議な噂のお話。

 すこし不思議な要素のある、現代ものの掌編です。
 なんかもう全体的に好き……設定自体の面白さもそうなのですけれど、その語られ方というか登場人物たちのありようの妙味が加わって、とても心地よい読み心地を産んでいるところがもう本当にたまりません。

 きっとすこし寂しく、なんなら悲しいお話でもあるはずなのに、でも全然そんな感じがしない。
 彼女ら彼らの個性のおかげで、とても明るく前向きな物語として読める。
 この感覚そのものがもう大好き。

 結びの展開なんかもう最高でした。
 そこに予告されている行く末はとても寂しいものであるはずなのに、それでもやっぱり暖かいこの読後感。

 とても好きなお話です。
 読みやすく、なによりとても面白いので、是非とも読んでみてください。