恥的生命体

高黄森哉

ある日、巨大な女の子が空から降ってきた。


「大変です。東京の街に、巨大な裸婦像が出現しました」


 それは、紫に塗られた巨大な少女の像だ。一糸まとわぬ姿で、町を背に、寝転んでいる。踏みつぶされた、ビルなどからの救出作業は、なお続いているようで、リポーターの後ろで、サイレンが響き渡っている。


「これは、芸術家の仕業なのでしょうか。さて、国会から中継があります」


 つい最近、総理大臣になった桑田総理は、会見を始める。


「日本政府は、この未曾有の大惨事をテロ認定します」


 死者、行方不明者十万人の大災害。もしも、人の手によってなされたのなら、これはテロリズムに他ならない。自衛隊のヘリコプターが、少女の周りを旋回する。



〈そして、半年が経った〉



 捜査に進展がないまま半年が経った。少女は未知の材質で出来ており、解体することは出来ない。やったことと言えば、児童ポルノだ、という意見を得て服を着せたくらいである。

 様々な科学者が調査したところ、どうやら、これは宇宙から来たようだ。クレーターが出来なかったのは、逆噴射装置が背面にあったからだとのことだ。異星人からの贈り物なのかもしれない、という意見が大半だが、なにの役に立つかは不明のままである。ある者は、娯楽を提供したのではないか、と言った。侵略前に青少年を取り込むことにした、という仮説もある。どれも、決定打に欠けるようだ。



〈決死隊が動いた〉



 好奇心を持って調査に及んだのは、科学者だけではない。全国に散らばる変態の類が、全財産を投じて、少女の身体を調べるプロジェクトを始めた。

 決死隊は、まずヘリコプターで腹に接近した。そこから、するすると下って、少女の大事な部分に到達すると、油圧ジャッキを使いそれをこじ開ける。中へ中へ進んでいく。壁に突き当たると、ダイナマイトでそれを破った。

 すると、巨大な空洞に出た。そのなかに、ボタンがあった。様々な数式が掛かれた赤色のボタンだ。押さずにはいられなかった。そして押した。そのとき、少女の顔が割れて、アンテナがグロデスクに飛び出した。アンテナが電波を飛ばし始めた。



〈電波の行く先で〉




「知的生命体から返答がありました。座標三千と四千の五千。つまり、軸方向で六千の場所に当たります」


 その昔、彼らは、彼らのを地球に向けて送り出した。彼らは、単為生殖なため贈り物は一体だけで事足りた。これが彼らの形態の全てなのだ。


「しかし、今回はあれじゃないだろうな。ほら、あれだ。知的生命体を見つけたものの、それらは貿易可能ではなかった、とかな。例えば、知的生命体の信号を拾って調査してみると、惑星を覆う液体が生命で、形態が違うが故に、我々とまるで思考回路が合わないということがあった。彼らは代謝しないが故に、食物が何か理解できなかった。また、個人というものを持たない知的集合体であるがために、貿易すらも理解できなかったのだ。こういうことは、かなり多かった。あとはそうだ、四次元人に関しては、我々を認識できなかったのだ」

「我々とよく似た生き物だそうで」

「そうか。しかし、相手はびっくりするだろうな」

「我々と近いようですが、少々思考が異なるようです。我々は服を脱いで臨まなければならないでしょう。この円盤を見てください」

「ん? これは」


 金色の円盤に、裸の男女が描かれている。


「ほうほう、彼らは裸族なのだな」

「返答に応じた人々も裸でした。裸族とみて間違いないようです。科学者の一団に違いありません。これをご覧ください」


 モニターには、決死隊の姿が映し出された。彼らはすごく興奮していた。雌しかいない種族の彼らには、それが一体何の器官なのか分からなかったが、不吉な予感がした。


「別の惑星にしよう」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

恥的生命体 高黄森哉 @kamikawa2001

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る