ふとした偶然が与えた気づき

 まだ幼い娘へ向けた、父親からの手紙から始まる物語。

 自然な筆致が魅力の現代もののドラマです。
 あるいは「恋愛」というジャンルの通り、確かに愛の物語。

 あまり多くを語ってしまうのがもったいない……というか、単純にネタバレになってしまうので紹介に悩みます。
 ネタバレがそこまで影響するタイプのお話ではないと思うのですけれど、やっぱり余計な予備知識のない状態で読むのが一番だと思うので……。



〈 以下、微ネタバレ注意! 〉

 物語の大胆な展開の仕方というか、始まりから終わりまでの移動距離みたいなものがとても好きです。
 まさかこんな風に進んでいくなんて……意外性が心地よいフックとして働き、気づけば話にがっつり引き込まれていました。

 描かれているもの自体も好き。
 ある種の挫折、と言えなくもないのですけれど、基本的には優しいお話で、読んでいてしんみり沁みてくるような情動を感じます。

 少し大仰な言い方ですけど、確かにそこに愛があるのを感じる、とても素敵な物語でした。