第12話 一期一会

ドイツでのボランティアも今日で終わり

今は帰りの飛行機をフランクフルト国際空港のレストランで、

昼食後のコーヒーを飲みながら振り返っている。

時折寝不足で手からコーヒーカップが滑り落ちそうになる。


今朝、俺はみんなとサヨナラをした。

まずはトルコ組、アフメトとセミルが旅立った。

続いてベラルーシ出身の最年少ガール、アディナ。

Wi-Fiボーイことビンルイに親切で気さくなシュファ。

そして立て続けにファビアン、パトリシア、ソフィア。

見送りはここまで、次に俺だった。

旅たちの時までの10分か20分、体育館の中はとても静かだった。

会話もほとんどなく、寂しさの渦にいた。

一人また一人と立ち去っていくことで、なんとも言えない切ない気持ちが抱かれた。

席を立ち、玄関を出る。

お世話になったエマやハンナとお別れの挨拶をする。

その最後が、リサだった。


リサと目が合い、胸の鼓動が高鳴る。

お互いの目が、寂しいと全身で訴える。

言葉でサヨナラを交わす。

ハグを強く交わした。

そして、一瞬でありながら永遠を感じる抱擁をして、

数センチの近さで顔を見合う。

その時、リサは、優しく俺の頬にキスしてくれた。

お互いに目から涙が流れた。


リサと離れ、1メートル、2メートル、5メートル。

10メートル離れたところで俺は振り返りリサの元に駆け戻った。

再び熱い抱擁をし、永遠の別れをした。

涙に濡れた頬をふきながら駅で電車を待った。


アナウンスが聞こえてくる。

間も無く搭乗手続きが始まる。


この海外でのボランティア、挑戦してよかった。

英語の重要性が身に染みてわかったし、

世界で協力して仲間と目的を達成することの、奮闘することのやり甲斐を知れた。

なにより度胸がついた。

そして、一期一会の意味も理解した。

リサ。

君のことは、おじいちゃんになって、

老後を生きる時になっても、

永遠に忘れることない、一人の女性として、

俺の記憶に残るのだろう。


「お互い、人生を楽しみ、幸せをつかもう」


こうして、颯は日本へと帰国した。

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恋した彼女はスペイン生まれ カンツェラー @Chancellor

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