影神

ラムネ



どれ程歩いただろうか、、


俺はずっと同じ様な場所をくるくると回っている気がする。



気が付いたらこの場所に居て。


時折。激しい頭痛がする。



「っ、。」



何だか。止まって居てはいけない気持ちに襲われ。


ゆっくりでも歩きながら、出口を探していた。



「出口、、」



いや、、。


そもそもここに出口等あるのだろうか。。


ここは何処なんだ、、



周りは真っ暗闇だが。


自分の目の前に広がる道は、ハッキリと見える。



「、、道路??



イタッ。」


何かを思い出そうとすると、頭の中を刺すような。


そんな感じの、激しい痛みが襲う。 



俺は歩いた。


ひたすらに。。



そうしなくちゃ"イケナイ"気がしたから。



暫くすると、辺りの暗闇が少しずつ無くなり。


建物の様なモノが見えてくる様になった。



でも、あまり考えない様に。俺は再び歩き出した。



「はあ、、」


疲れてきた。



頭痛とは、仲良くやれた。


どのくらい歩いたのか。


どうしてここに居るのか、、



それを気にしなければ良かった。



遠くに何かが見えた。


「ん、、?」


いや、、居たのだ。



だんだん近付いて行くと。


そこには小さな女の子が、小さく座っていた。



そのまま通り過ぎようとしたが。


何だか気になってしまった。



「大丈夫、、??」


小さな女の子はゆっくりと顔を上げた。



女の子「、、お兄ちゃん。


だあれ??」


「俺は、、」


イッ、、


俺は誰なんだろう、、



投げ掛けられた質問に、頭痛が応え。


対話する事が出来なかった。



女の子「お兄ちゃんもここから出られないの??」


悲しそうな。寂しそうなその表情に。


思わず作り笑いをした。


「そうかな、笑。」



女の子「一緒だね??」


女の子も、真似して笑った。



会話は続かなかったが。


俺は女の子の前に手を出した。


「一緒に出口を探しに行こう??」


すると女の子は俺の手を握った。


女の子「うん。」



女の子の手は、まるで冷凍庫の氷を。


力強く握った時の様に。



とても冷たくて。少し痛かった。



だけど、、どうしてか。


この手を離したら。



この女の子は、ここから出られない様な気がした。



ゆっくりと。


女の子のペースに合わせて歩いた。



こんな小さな子と歩くなんて、、



上から見える顔を見ながら。


どのくらいあのままの状態で居たのかを想像する。



まだこんなに小さいのに、、



よく分からない場所で。


ずっと、ひとりぼっちで。



気付いたら涙が流れていた。



女の子「、、お兄ちゃん。



どこか痛いの??」


「うぅん。。


大丈夫。



お兄ちゃん結構強いんだ??」


女の子「へー。


すごい!!」



女の子の眼には少しだけ輝きが見えた。



「ここから出られたら。



お兄ちゃんが何か買ってあげるよ。」


女の子「本当??」


「本当。



だから。


諦めないで?



ゆっくりで良いから。


少しずつ、進もうね??」



それはまるで、自分にも言い聞かせるかの様に。


俺は女の子に言ったのだった。



女の子「約束ね??」


「うん。」



膝を曲げ。


出された小指を絡める。


女の子「ゆびきりげんまん、


うそついたら、はりせんぼんのーますっ。



ゆびきった。」



そうしてまた。ゆっくりと歩く。 



どのくらい歩いただろうか。。


ずっと女の子を気にしながら歩くが。


、、約束をしたからか。


女の子は一生懸命歩いていた。



欲しいモノが凄く高かったらどうしよう、、


なんて考えている頃には。


手の感覚は既に無かった。



そんなのはもう。俺にはどうでも良かった。


女の子を早くこんな場所から、出してあげたかった。



「えっ、、。」


視線を戻すと。


建物の扉の様なモノが明るく光っていた。



出口だ、、



俺は立ち止まった。


女の子「どうしたの??」


女の子は顔を上げる。


「明るい光が見えない??」


女の子「うぅん、、



でも。お兄ちゃんが見えるなら。


それは、"出口"だよ。」



感覚の無くなったハズの手から。


女の子の手が離れそうになるのを感じた。



ぎゅっ、、



女の子「、、どうして??」


「"約束"したじゃん??」


指切りした小指を見せる。



「大丈夫。


きっともう直ぐだから。



ね?」


女の子は、抱き付いて来た。



子供は、感じとる。


考えが。例え幼くとも。


その純粋な優しさは。



俺が大人になったから、失くしてしまったモノ。



優しく女の子の頭を撫でる。


「何を買おうかねえ?」


気を紛らわす様に。


泣いている女の子に聞いてみる。



女の子「、、ビー玉の入っ、た。


ラムネが、飲み、たい。」


「そうかそうか」



純粋に。


可愛かった。



子供を持つ親の気持ちの。


良いところだけを、味わった。



女の子「あぁあ!!」


「ん??」


女の子が指差す方を見ると。


明るい光が見えた。



女の子は走り出した。


だから俺も小走りをした。



光の前に立つと。


扉の様なモノが眩しいくらいに光っていた。



女の子「、、お兄、ちゃん。


ありが、とう、、ね??」


「うぅん。。


こちらこそ。



ラムネ。


ちゃんと買うから。」



泣いてる顔は、あえて見なかった。


だって。きっと、、



恥ずかしいだろうから。



ノブに手を伸ばし。


ゆっくりと扉を開く。



握った手は。


まだ離さない様に、、



視界が白くなる程の明るさ。


それが全体を包んだ。



「んっ、、」


目を明けると。


同じ様に続く模様の白い天井が見えた。



「ここは、、」


独特の臭いがした。


ここは病院のベッドだった。



握った手を見つめる。


そこにはまだ、確かに。



あの感覚があった。



ナースコールを押して。


先生が来て。


何だかんだ説明された。



親にも病院が連絡して。


ついでに警察も来るらしい。



自分に何があったかなんて。


そんなのは正直どうでも良かった。



それよりも。


女の子が心配だった。



扉を開け。廊下を見ると。


その先には、見覚えのある顔が見えた。



どうしてだかは分からないが。


女の子が近くに居る様な気がした。



俺は壁に凭れながら。


女の子は、お母さんらしき人に支えられながら。



俺はナースに怒られながら。


女の子は、お母さんらしき人に心配されながら。



ゆっくりと2人は近付く。



壁に体を預けながら。


俺は床に座った。



女の子の顔の場所と同じくらいの高さになると。


2人してこう言った。



『おかえり』



そうして、2人して。


笑い合った。





















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影神 @kagegami

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