何かに、ただ、見られている

 ある日突然感じるようになった謎の視線に、心を苛まれる男子大学生のお話。

 現代もののホラーです。
 背後に気配のようなものを感じるも、しかし振り返っても誰もいない。
 果たしてそれはなんらかの精神的な症状なのか。それとも何かこの世のものではない、恐ろしい存在が憑いているのか。
 正体がわからないまま翻弄され、徐々にやつれていく様子がとても印象的なお話です。

 こういうの好き。傍目には(というか読者としての目線では)、「おいお前おかしくなってるぞ! しっかりしろ!」ってなるんですけど。
 でも、もしいざ自分が同じ目に遭ったら、まあこの彼と同じようになるんだろうな……という、この共感ありきのやきもき感。

 正体がわからないことへの恐怖と、常時かかり続けるストレスの怖さを丁寧に描いた、シンプルながらも恐ろしい物語でした。