視線
ムラサキハルカ
一
はじまりは大学から下宿までの徒歩二十分の
サークルに寄って、ああだこうだ喋ったあとの夜道。男の子と手を繋いだ女性の後ろを歩いていると、唐突に背中がぞくぞくした。さわられてるわけじゃない。ただ、なにかにの存在を感じた。
おそるおそる振り向く。歩道とガードレールがあるだけで誰もいない。おかしいなと首を捻ってまた帰路につく。
そうしてしばらく歩いていると、また同じ感覚に襲われた。再び振り向いてみるが、電信柱とガードレールがあるだけで、やっぱり誰もいない。
彼女ができたばかりで疲れてるのか。そう思い、また元の道に戻る。
さっきまでは子連れの女性が前を歩いていたけど、足を止めているうちにいなくなっていた。なんだか、心細くなった気がしつつも、なんとはなしに道沿いにあるアジサイが目に入る。暗いせいか、色はよくわからない。
とにかく、早く帰ろうと足を急がせようとした。
ガサッガサッ。
反射的に後ろを見やる。なにも……ない。
いや、おかしいだろ。音からして、それなりに大きい生き物がいたはずだ。なのに、影も形もないなんて。
たまらず駆け出す。もう、振り返りたくなかった。
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